サメ襲撃の死者が増加、原因は観光?

2012.02.14
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ガラパゴス諸島の海を泳ぐガラパゴスザメ(資料写真)。

Photograph by David Fritts, Stone/Getty Images
 2011年、幸いなことにアメリカでは、サメの襲撃による死者は1人も出なかった。しかし、フロリダ大学が発表した「2011 Worldwide Shark Attack Summary(世界のサメ襲撃の概要)」によると、世界全体では死者数が増加、1993年以降で最高の12人だったという。 報告書を作成したジョージ・バージェス(George Burgess)氏は、この2つの傾向の原因は観光だと語る。

 2011年、アメリカで突然サメに襲われた事件は29件で、過去10年の平均39.1件を下回った。フロリダ大学のフロリダ自然史博物館に所属するサメ専門家バージェス氏は、「1998年以降で最低の数字で、減少傾向が続いている」と説明する。

「アメリカ、特に以前は多発していたフロリダ州での減少は景気悪化と一致しているように見える。海のリゾートで休暇を過ごす人が減ったのだろう」。

 サメは乱獲によって全世界的に減少しており、海岸近くで姿を見せなくなったところもある。

 しかし、バージェス氏によれば、フロリダ州には当てはまらないという。襲撃の大部分はハナザメ、オオメジロザメ、ニシレモンザメ、イタチザメ、カマストガリザメなど、沿岸に生息する大型のサメの仕業だが、近年これらの個体数は安定している。

 この事実を踏まえると、「アメリカ、そしてフロリダ州の海で泳ぐ人が減っていると推測できる」とバージェス氏は述べる。

◆世界では襲撃が増加

 一方、世界に目を向けると、観光業の拡大が襲撃数を微増させている可能性があるという。

 最近の事故の多くは、歴史的に人とサメの遭遇が珍しかった場所で起きている。例えば、コスタリカとケニア、ニューカレドニアで各1人、インド洋のフランス領レユニオンとセーシェルで2人ずつが死亡した。

「実際に事故が起きるまで、多くのコミュニティーはサメの襲撃に対してしっかりと備えていなかったようだ」。

◆求められる観光地のサメ対策

 観光地として人気が出てきた海辺のコミュニティーは、新たな収入の一部分を、よく訓練されたライフガードや救急医療の人材、医療施設に投じるべきだとバージェス氏は指摘する。

 また、サメに関する注意事項を地元住民や観光客に伝え、海中は野生の世界だとわかってもらうことも重要だ。

◆襲撃の原因

 ピュー慈善財団で世界規模のサメ保護を担当する責任者マット・ランド氏によれば、観光開発によって気付かないうちにサメの生息地に侵入してしまうケースがあるという。

 ランド氏は一例としてブラジル東部のレシフェを挙げる。1990年代、レシフェの沿岸でサメによる事故が頻発するようになり、一帯がオオメジロザメの繁殖地と明らかになった。観光施設の建設のためマングローブ林の伐採が進んでいたが、上流にいくつもある魚の加工工場は残骸や血を流し続けており、サメを引き寄せていたのである。

◆本当の脅威は?

 ただし、ピュー慈善財団のランド氏は、「われわれはサメを恐れるが、サメはそれ以上に人間の脅威にさらされている」と指摘する。「周知の通り、サメの個体数は激減している。この状況が変わらなければ、人に対するサメの脅威は小さくなるが、メリットばかりではない。海の生態系に大きな悪影響を及ぼすことにもなるだろう」。

 全世界の人が海で過ごす時間は、年間で延べ数十億時間という。しかし、2011年に突然サメに襲われた事件はわずか75件だ。

「一方、われわれは漁業によって年間3000万~7000万匹のサメを殺している」とフロリダ大学のバージェス氏は話す。「どちらが本当の脅威かは数字を見れば明らかだ」。

Photograph by David Fritts, Stone/Getty Images

文=Brian Handwerk

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