哺乳類、大型化に2400万世代

2012.02.06
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写真のクロサイなど大型の哺乳類は、小型の哺乳類に比べて進化に時間がかかる。

Photograph by Peter Delaney, Your Shot
 哺乳類は、ネズミからゾウの大きさへ進化するのに約2400万世代を要しているという研究成果が発表された。 研究チームが化石と生体試料を用いて、28の哺乳類グループの過去7000万年における成長速度を計算したところ、大きな体に進化するには、小さくなるよりも時間がかかることが明らかになった。

 哺乳類の体のサイズは、100倍に進化するのに少なくとも160万世代、1000倍になるのに約500万世代、5000倍になるのに約1000万世代を要するという。

 陸生哺乳類の中では、ウマやサイなどの奇蹄目が最も速い成長速度を示した。不思議なことに、今回調べた哺乳類の中で最も成長速度が遅かったのは霊長目だ。

「ちょっとした謎だ」と研究を指揮したオーストラリア、モナシュ大学の進化生物学者アリステア・エバンズ(Alistair Evans)氏は話す。「大型のサイやゾウを作るより、大型の霊長目を作るほうがはるかに難しい。(中略)これには多くの理由が存在しうるが、霊長目でありながら大型化するのは非常に難しいようだ」。

 全哺乳類中、成長速度が最も速かったのはクジラやイルカなどのクジラ目だ。体の大きさが1000倍になるのに約300万世代しかかかっていない。

 エバンズ氏らの研究チームは、この違いはおそらく体重が水によって支えられており、大型化することが陸上の場合ほど困難でないためだと推測している。というのも、海生哺乳類のほうが、大型化における支障が少ないからだ。例えば、水の浮力がないと、クジラの内臓は自重によって押しつぶされてしまう。

◆驚異的な小型化のスピード

 また研究では、哺乳類が小型化するスピードは、大型化する場合の最大30倍に達することが明らかになった。「体が小型化する速度が大型化する速度とこれほど差があるというのは、実に驚くべきことだ」とエバンズ氏は言う。

 小型化のほうが速いことには、主に2つの理由が考えられるという。1つは、大型化においては、増加した体重を支え、動かすために、骨格や筋肉に多くの変化を要することだと、今回の研究に参加したニューメキシコ大学のジェームズ・ブラウン(James Brown)は話す。

「生物の体が大きくなる過程では、さまざまな設計上の制約にぶつかる」とブラウン氏は言う。「それらの問題に対処するには、革新が必要だ。新たな遺伝子や、発達プログラムの新たな読み方が」。

 第2の理由は、体のサイズにかかわらず、すべての哺乳類は、たった1つの細胞から成長し、発達段階を経て体を大きくしていかなければならないことだとエバンズ氏は言う。よって、体を小さくするためには、発達を早い段階で止めればいい。「発達プログラムをさらに延長しようとする代わりに、早く切り上げるのだ」とエバンズ氏は述べている。

◆これまでで最も包括的な哺乳類の進化研究?

 インディアナ大学の古生物学者デイビッド・ポリー(David Polly)氏は、今回の最新研究について、哺乳類のサイズの進化に関するこれまでで最も包括的な調査の1つだと評している。

「化石を用いて進化の速度を測るというのは、骨の折れる作業だ。進化速度はこれまでも研究されてきたが、通常はかなり特定の生物グループに的を絞っている」とポリー氏は言う。同氏は今回の研究には参加していない。

 また、今回の研究成果によって、これまで多くの研究者たちが推測してきたことが確認されたようだとポリー氏は言う。すなわち、非常な大型への進化は、これまでの研究が示唆するよりもはるかに長い時間を要するということだ。既存の研究はもっぱら、短い地質学的年代における個々の生物種のサイズ変化を対象としてきた。

 エバンズ氏らのチームは、今回得られた知見が他の生物グループ、例えば恐竜などにも当てはまるのではないかと考えている。「既に恐竜についても研究を始めているが、難しいのは、恐竜の1世代がどの程度の長さかわかっていないことだ」とエバンズ氏は述べている。

 今回の研究成果は、「Proceedings of the National Academy of Sciences」誌オンライン版に1月30日付で発表された。

Photograph by Peter Delaney, Your Shot

文=Ker Than

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