2008年にハッブル宇宙望遠鏡が可視光で撮影した太陽系外惑星「フォーマルハウトb」。

Image courtesy NASA/ESA
 みなみのうお座にある約25光年離れた1等星「フォーマルハウト」。2008年、周囲を公転する太陽系外惑星をハッブル宇宙望遠鏡が初めて可視光で撮影した。しかし新たな研究によると、惑星と見られた「フォーマルハウトb」は、単なる“宇宙塵の渦”かもしれないという。 フォーマルハウトは直径約346億キロのちりの円盤に囲まれており、その姿は映画『ロード・オブ・ザ・リング』に登場する「サウロンの目」を連想させる。円盤の猫の目のような特徴的な形は、フォーマルハウトを公転する小さな惑星が少なくとも1つは存在する証拠と考えられている。

 惑星が発見される以前から、重力の痕跡を理由として存在が推定されていた。円盤の楕円の形状や内側のくっきりした境界線は、惑星がちりやガスを“一掃”しながら通過している証拠だという。

 しかし、「スピッツァー宇宙望遠鏡の新たなデータによると、フォーマルハウトbは彗星や小惑星同士の衝突で発生した“ちりの雲”かもしれない」と、研究責任者でアメリカ、プリンストン大学の天体物理学者マーカス・ジャンソン氏は話す。

 問題の天体は可視光では非常に青く見えるのに、赤外線ではほとんど見えない。これは、ちりの雲のような質量の小さい天体だと考えれば説明がつくという。

◆衝突説をめぐる議論

 フォーマルハウトbの発見者の一人であるカリフォルニア大学バークレー校の天文学者ポール・カラス氏のチームでも、当初は同じ衝突理論を検討したという。

 だが、そのような衝突は非常にまれで、実際に観測できる確率は極めて低いと考えた。「可能性は排除しないが、“ラッキーな観測”に頼る議論には賛成しない。よほど幸運でなければ観測できない現象だ」とカラス氏は述べる。

 一方、ジャンソン氏は、フォーマルハウトの周囲では彗星や小惑星同士の衝突がそれほど珍しくないと考えている。「頻繁に起きているに違いない。そのような衝突は、巨大なちり円盤が形成される原因だからだ」。

◆惑星なのか?

 また、ジャンソン氏は次のように説明する。「惑星がその場所に存在しているとすれば、若くて温度が高いはずだ。スピッツァーが赤外線でとらえられる程度の光は出すだろう。可視光よりも近赤外線波長の光を強く放つはずだが、観測結果は逆だ」。

 発見者のカラス氏は、「赤外線観測は、木星よりも質量の小さい惑星を検出するには感度が不十分なだけだ」と反論する。

 フォーマルハウトbは質量が小さく、太陽系の土星のように氷の粒子でできた環がある影響で、可視光の明るさが増していると同氏は推測する。「土星は45億年間、環を維持し続けている。つまり、ちりの集合の寿命はとても長く、特別な環境を想定しなくても理論が成り立つ。妥当な推測だと思う」。

 だが、ジャンソン氏は、環があるという仮説は説得力が低いと考えている。例えば、ハッブルのデータは、惑星の周囲に環が存在する場合の予測値と比べると変動が大きいという。

◆系外惑星研究にとって面白い時代

「フォーマルハウトbの正体が何であれ、太陽系外惑星の研究にとって面白い時代になった。既に700個以上の系外惑星が発見されているからね」とカラス氏は話す。 「系外惑星の研究はこれからも発展していく。たくさんの驚きがあり、謎が次々に解明されるだろう」。

 ジャンソン氏の研究は「Astrophysical Journal」誌での発表が予定されている。

Image courtesy NASA/ESA

文=Brian Handwerk