フィリピンの首都マニラにあるウリンガン(Ulingan)地区。人々は日々の糧を得るため、近くの廃棄物処分場や建設現場で拾ってきた木材から木炭製造に励む。ゴミと有毒ガスにまみれたスラムの現状を、本稿はさまざまな側面からレポートする。

Photograph by Lisa Wiltse
 フィリピンの首都マニラにあるウリンガン(Ulingan)地区。人々は日々の糧を得るため、近くの廃棄物処分場や建設現場で拾ってきた木材から木炭製造に励む。ゴミと有毒ガスにまみれたスラムの現状を、本稿はさまざまな側面からレポートする。 ゴミ捨て場に隣接したウリンガン地区など、マニラ湾近辺にはスラムが散在するが、その衛生環境の劣悪さは想像を絶する。木炭の製造法も、地面に掘った穴で焼くなど原始的だ。一酸化炭素や亜酸化窒素、すすの他、化学処理した木材の燃焼で発生する有害化学物質などが原因となり、呼吸器系の疾患や心臓病に悩む住民が急増しているという。

 ゴミの山をあさって生計を立てているマニラの貧困層の窮状を見れば、潘基文(パン・ギムン)国連事務総長が2012年を「すべての人のための持続可能エネルギーの国際年(International Year of Sustainable Energy for All)」にすると宣言した意味が浮かび上がってくる。潘事務総長は、「エネルギーが経済成長と社会の平等性、環境保護をつなぐ架け橋になる」と話した。現在、世界中で27億以上の人々が、木材、木炭、糞、石炭、農業廃棄物を旧式のストーブやたき火で燃やしている。電力を利用できない市民は世界中で14億人。エネルギー不足の地域は、大部分がアジアと太平洋諸島に集中しているという。

 国連開発計画(UNDP)が2012年1月に公開したレポートは、「エネルギーは発展に欠かせない要素だが、貧困層の所得を向上させる取り組みが伴わなければ(発展は)不十分」と結論付けている。

 マニラでは、エネルギー不足が原因の貧困の連鎖が大きな問題となっている。多くの子どもたちが家計を助けるための木炭作りに駆り出され、学校に通えない。木炭をかき分け、ほんの数ペソ(数円)の価値しかない釘を探す写真の少女のように、どん底の環境で命を削るような生活を強いられている。居住者がゴミをあさるスラムでは、コレラや赤痢、マラリア、皮膚疾患、結核、腸チフスなど、35種類以上の疾病が広がっている。

 発展途上国での小規模な木炭製造は違法の場合が多いが、十分な規制が整備されていない国も多い。マニラのような都市部のスラムだけでなく、世界各国の地方でも問題化している。例えばコンゴ民主共和国のヴィルンガ国立公園では、木炭の原料となる森林が伐採され、マウンテンゴリラの生息地が脅かされているという。

Photograph by Lisa Wiltse