地球を覆う“冷たいプラズマ”のベール

2012.01.25
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地球を周回するESAの探査機クラスター2の想像図。

Illustration courtesy J. Huart, ESA
 地球の大気圏の最上層部から、少なくとも月までの距離の4分の1まで広がる“冷たいプラズマ”の雲が存在することが、欧州の人工衛星クラスターから得られた新たなデータにより明らかになった。 冷たいプラズマ(動きの鈍い荷電粒子)は地球由来で、大気圏と宇宙空間の境目では太陽光が大気ガスの原子から電子をはぎ取り、プラスの電荷を帯びた中心部分の原子核だけが残されるため、こうした粒子の雲が生まれる。

 これらの粒子は観測が難しいが、宇宙天気にも影響を与えているのではないかと疑われてきた。こうした宇宙天気の例としては、1月23日に発生した太陽フレアとそれに起因する磁気嵐がある。太陽で嵐が発生した場合、冷たいプラズマと同様の、ただし高速の荷電粒子が大量に地球を襲うことから、地球起因の荷電粒子についても宇宙天気との関連が想起された。

 しかし、地球をめぐる冷たいプラズマの正確な量を把握しなければ、これが及ぼす影響についてもわからない。

「これはテレビで見る天気予報に似ている。基本的な変数を把握せずに、妥当な予報を行うのは非常に複雑な作業になってしまう」と、スウェーデン宇宙物理学研究所のマッツ・アンドレ(Mats Andre)氏は説明する。「この冷たいプラズマの発見は、地上の天気で言えば、気象に影響を与える海が新たに見つかったようなものだ」。

◆冷たいプラズマが見つかるまで

 地球の上空約100キロにある電離層については、何らかの冷たいプラズマの存在が既に指摘されていた。しかしさらに上空、2万~10万キロの範囲にある粒子の雲に着目した研究者は、これまで稀だった。

 アンドレ氏と同僚のクリス・カリー(Chris Cully)氏は、この領域にもプラズマが存在するのではないかと考えていたが、プラスの電荷を帯びた宇宙線が調査の障害になることもわかっていた。

 冷たいプラズマが生成されるのと同様のプロセスで、太陽光は宇宙線を構成する材料からも電子を奪うため、その外殻はプラスの電荷を帯びる。そのため、磁石の同じ極を合わせた時のように、宇宙線は周囲の冷たいプラズマをはじき飛ばしてしまう。

 そこで、この冷たいプラズマを検知するため、アンドレ氏とカリー氏は欧州宇宙機関(ESA)の探査機、クラスター2から得られたデータに存在する特異性を分析することにした。

 クラスター2は極端な楕円軌道で地球を周回する4つの人工衛星の集まりだ。最も地球から離れた時、衛星は地球と月との距離の半分の地点にまで達する。ここまで離れることで、太陽から発せられる“熱い”荷電粒子の影響を含め、地球の磁場や電気的活動を徹底的に調査、監視することが可能になる。

 クラスター2が集めたデータに見つかった特異性は、これらの人工衛星の周囲で動き回る冷たいプラズマの衝撃波であることが明らかになった。

◆冷たいプラズマは宇宙天気の“巨象”

 最終的に、アンドレ氏とカリー氏は、地球の磁場の果てに近い領域では、冷たいプラズマが全荷電粒子の50~70%を占めていることを突き止めた。

 この発見により、今後は予想以上に大量に見つかった冷たいプラズマを考慮に入れた新しい宇宙天気モデルを作る必要があると、アンドレ氏は述べている。現時点では、この冷たいプラズマが太陽嵐などにどのような影響を与えているのかはまったくわかっていない。

 冷たいプラズマの影響についてアンドレ氏は、「宇宙天気に関しては小さいものではない。部屋に大きな象がいる(誰もが認識しているがあえて触れない重要な問題の例え)ようなものだ」と述べている。

 今回の冷たいプラズマに関する研究は、「Geophysical Research Letters」誌への掲載を許可された。

Illustration courtesy J. Huart, ESA

文=Dave Mosher

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