始祖鳥の翼は黒かった

2012.01.25
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始祖鳥の羽の化石(写真)。この羽は黒かったという。

Photograph by Robert Clark, National Geographic
 初めて空へと飛び立った恐竜の一種、始祖鳥の翼には少なくとも1枚、黒い羽が生えていたことが最新の研究で確認された。 始祖鳥の翼の色を確定するため、研究チームは化石の羽を走査型電子顕微鏡で分析した。この化石は1861年にドイツの石灰岩の層から見つかったもので、体全体はカラスほどの大きさだ。

 驚いたことに、この古代生物の羽の微細構造は、現生鳥類の羽毛の構造とまったく同じだった。

 ロードアイランド州プロビデンスにあるブラウン大学の進化生物学者で、この研究を率いたライアン・カーニー(Ryan Carney)氏は、「現代の羽と完全に同じものが1億5000万年も前のジュラ紀にすでに進化していたということだ」と話す。

◆始祖鳥の色の探究

 カーニー氏の研究チームは特殊な顕微鏡を使い、羽に含まれるメラノソームという細胞小器官を探し出した。

 メラニン色素を含むメラノソームは、動物の体内でさまざまな機能を果たしている。毛髪や羽の色を決めるのもメラノソームの働きだ。メラノソームには球形のものや棒状のものがあるが、その形や細胞内の配置が羽の色に関係する。

 始祖鳥の羽の本来の色を確認するため、研究チームは始祖鳥のメラノソームと現生鳥類87種の羽115枚のメラノソームとを比較し、始祖鳥の翼に生えた少なくとも1枚の羽は95%の確率で黒かったと結論づけた。

◆黒い羽が有利な理由

 ワシントンD.C.の国立自然史博物館に所属する古生物学者ハンス・ディーター・スーズ氏は、「間違いなく示唆に富む」発見だと評価する。「黒は鳥の羽毛によくある色だ。始祖鳥の羽が黒かったとしても不思議ではない」。スーズ氏は今回の研究に関係していない。

 鳥にとって黒い羽には飛行上の利点がある。黒い羽は、色素の詰まったメラノソームが多く含まれ、メラノソームがケラチンというタンパク質と結合するため、ほかの色の羽よりも厚く、丈夫で、耐久性を持つのだ。

 カーニー氏は、「これまでの研究から、翼の羽は黒くなるケースが最も多いことがわかっている。白い鳥でも翼の先端だけ黒いことがよくあるのも、同じ理由だ」と話す。カーニー氏はナショナル ジオグラフィック協会/ウェイト助成金を受けている。

 黒く、したがって丈夫な羽は、始祖鳥が木々の間を羽ばたいたり滑空したりするのに有利だったと考えられる。

◆飛び方の議論は未決着

 始祖鳥が主に飛翔していたのか滑空していたのかについては議論があるが、カーニー氏は、今回の発見は問題の決着の助けになりそうにないと話す。「始祖鳥が翼で飛翔していたにせよ滑空していたにせよ、羽はやはり、メラノソームで丈夫になっていただろう」。

 オハイオ大学の古生物学者ローレンス・ウィットマー氏も同じ考えだ。「始祖鳥の飛行能力を巡っては、これからもずっと議論が続くだろう。実際、この新発見は論争に大きな影響を与えるものではない」。ウィットマー氏は今回の研究に関係していない。

 しかし、羽の色の発見が影響する分野もある。これまで多くの画家が極彩色で描いてきた始祖鳥が、実はごく地味な色だった可能性が出てきたことだ。

「私が始祖鳥の復元像を作るとしたら、個人的には、真っ黒にすると思う」とカーニー氏は言う。「しかし、それは科学的な確信を持ってのことではない。この証拠だけから言えば、翼が黒くて胴体が白ということもあり得るのだ」。

 始祖鳥の羽の色についての発見は、「Nature Communications」サイトに1月24日付けで掲載された。

Photograph by Robert Clark, National Geographic

文=Ker Than

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