ベネチア水没、地下へ海水注入で防止?

2012.01.20
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アドリア海の海面が上昇すると、ベネチアの雨水排水路を海水が逆流、サンマルコ広場まで浸水する。

Photograph by Alvaro Leiva, Age Fotostock/Getty Images
 地盤沈下と海面上昇で水没が懸念されるイタリアのベネチア。効果的な対策が模索される中、「水には水を」という新発想のプランが提案された。多孔性の地層に大量の海水を注入、膨張させれば、水の都が約30センチも上昇するという。 高潮由来の異常潮位現象「アックア・アルタ」は、毎年4回程度ベネチアを襲い、海抜の最も低い地域(総面積の約14%)を水没させる。 しかも、被害は悪化の一途をたどっている。

 ベネチアでは、1950~70年にかけて産業用に大量の地下水を汲み上げ、20年で約12センチも地盤が下がった。ただし、「Geophysical Research Letters」誌に掲載された2002年の調査によると、現在は100年で5センチ以下にペースダウンしているという。

 しかし、ベネチアの沈下ペースが落ちても、周りを取り囲むアドリア海は膨張を続けている。海水注入策を提案したイタリア、パドヴァ大学の水文学者ジュゼッペ・ガンボラティ(Giuseppe Gambolati)氏によると、ベネチア沿岸の海面は今世紀末までに約30センチの上昇が見込まれるという。

 同氏のプランでは、ベネチアの街に直径10キロの円を描く12本の井戸を掘り、10年間で1500億リットルの海水を地下注入する。

「海水を注入した地層が膨張して、沈下の進行を食い止める。地層が安定したら、今度は隆起を促していく」とガンボラティ氏は説明する。

◆高潮の遮断

 ある程度の隆起に成功した場合、建設中のモーゼ防潮システム(モーゼ計画)の必要性は低くなる。電動可動式の防潮堤で、ベネチアの潟の入り江3カ所に導入が進められている。大規模な高潮が迫ると、海底の防潮堤が立ち上がり、潟の入り口を封鎖する仕組みだ。

「Climate Dynamics」誌に掲載された2010年の調査によると、現地の海面が平均28センチほど上昇すると、2100年頃には年に35回もモーゼを稼働しなければならない。

 しかし、海水注入プロジェクトが成功すれば、モーゼの稼働を年4回に減らせる可能性がある。

 研究チームは、石油会社やガス会社が爆発物を使い、潟を掘削して地質調査を行った1980年代の地震データと最近のデータを結合。作成した3Dマップでは、ベネチアの地下にある不浸透性の粘土層を過去最高の精度で確認できる。

 ガンボラティ氏によると、この粘土が重要なのだという。「海水は地下650~1000メートルに横たわる幾重もの砂の層に注入する。粘土層が蓋の役割を果たせば、海水が上方へ漏れ出すことはない。注入した地層の中で横方向に拡散するはずだ」。

◆実現の可能性

 ガンボラティ氏によると、10年計画の海水注入プロジェクトは着工許可が下りれば1~2年で開始できるという。

 経済性も高く、モーゼ計画ほどコストがかからない。「まだ詳細な見積もりは出していないが、総費用は2億~3億ユーロ(約200億~300億円)だろう。モーゼ計画は保守を除いた建設のみでも50億ユーロと発表されている」。

 ガンボラティ氏が参加した最新研究は、「Water Resources Research」誌に2011年12月7日付けで掲載されている。

Photograph by Alvaro Leiva, Age Fotostock/Getty Images

文=Brian Handwerk

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