太陽の生まれ故郷、有力候補が消える?

2012.01.18
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ハッブル宇宙望遠鏡で撮影したオリオン星雲。多数の星の元になる、ちりとガスの塊である。

Image courtesy ESA/NASA
 太陽の生まれ故郷として最も有力視されていたメシエ67(M67)。しかし、新たなコンピューター・シミュレーションによれば、その可能性は低いという。 太陽のような恒星は、星団の中で他の恒星と共に形成されるのが一般的だ。現在、太陽は孤立している。約45億年前、太陽と生まれたばかりの太陽系は、故郷の星団から押し出されたか、仲間の恒星から徐々に離れていったと考えられている。

 M67は直径100光年の星団であり、温度や年齢、化学構造が太陽とよく似た恒星を擁する。太陽からの距離も2900光年と比較的近い。

 ところが、新たな研究は、太陽がM67で形成されたという複数の証拠を揺るがし、その可能性をほぼ否定している。

 コンピューター・シミュレーションによれば、太陽が重力でM67から押し出され、現在の場所で落ち着くには、めったに起きない出来事が重なる必要があるという。具体的には、2~3個の大質量星が適切な位置に並ばなければならないそうだ。

 そのような強力な現象が起きる確率は限りなく低い。たとえ発生したとしても、押し出される際のスピードによって、生まれたばかりの太陽系はばらばらになるはずだ。

◆3Dコンピューター・シミュレーション

 太陽の仲間を探す際には、同じような年齢の恒星から放たれる光のスペクトルや化学構造を太陽と比較する。現在、地球から325光年の範囲では、可能性が高い恒星は2つしか確認されていない。太陽に似た恒星を擁する星団のうち、最も近いのがM67だ。

 メキシコ国立自治大学の天体物理学者バルバラ・ピチャルド(Barbara Pichardo)氏らのチームは、1年にわたり、3Dコンピューター・シミュレーションを行った。太陽がM67で形成された新たな証拠の発見ばかりを期待していたという。

◆問題はスピードと上下運動

 ピチャルド氏らのコンピューター・シミュレーションでは、天の川銀河とその渦状腕、謎の暗黒物質のハローまでもが詳細にモデル化された。また、M67と太陽が銀河系の面を上下する動きも計算した。

 太陽は現在、時速約10万8000キロでM67から遠ざかっている。しかし、ピチャルド氏らのシミュレーションでは、適切な場所と時間でM67から太陽が押し出された場合、時速は20万9000キロ近くなければならないと示されている。

 そのスピードでは、太陽系から惑星がはじき出されてしまう。「たとえ留まっても、軌道が乱れ、非円形になるだろう」とピチャルド氏は説明する。

 カナダ、ビクトリア大学の天体物理学者フリオ・ナバロ(Julio Navarro)氏は今回の研究結果について、「M67が太陽の生まれ故郷である可能性に相当な疑問を投げ掛けている」とコメントした。

 また、太陽とM67の上下運動を分析するだけでも検証には十分かもしれない。星団から押し出された恒星は、生まれ故郷の星団と同じ振幅で動き続ける傾向がある。「M67の上下運動は太陽の5倍も大きく、あまりに力強い。こちらのアプローチの方が解決に近い可能性もある」とナバロ氏は述べる。

 今回の研究は「Astronomical Journal」誌で発表される予定だ。

Image courtesy ESA/NASA

文=Dave Mosher

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