ケニアのナイバシャ湖でアメリカザリガニが繁殖している(資料写真)。

Photograph by David Keith Jones, Images of Africa Photobank/Alamy
 アメリカ南部で人気の食材「アメリカザリガニ」が、はるか遠くアフリカで繁殖している事実が判明した。天敵がいないので勢力を一気に拡大し、淡水の小魚、魚卵、軟体動物、甲殻類、水生植物を食い荒らしているという。 侵略的外来種の体長は約15センチ。既に、ケニア、ルワンダ、ウガンダ、エジプト、ザンビア、セーシェル、モーリシャス、南アフリカの湖沼や湿地で広く分布が確認されている。

 自然保護活動家は、マラウイ湖、タンガニーカ湖、ビクトリア湖など、数千とも言われる固有種を育む東アフリカ地域の湖への進出を警戒しているという。

「ザリガニの移入で湿地の動物や植物が絶滅すると、生態系のバランスが崩れ、正しく機能しなくなってしまう」と、国際自然保護連合(IUCN)の「種のプログラム」で外来種部門のグローバル・コーディネーターを務めるジェフリー・ハワード氏は語る。

◆“おいしい”侵略者

 アメリカザリガニは1970年代に初めてアフリカへ移入。ケニアと南アフリカで食用として養殖された。

 ケニアのナイバシャ湖産は、病気が原因で固有種が絶滅したスカンジナビアに輸出された。「ザリガニはまだ脅威とは認識されていないが、ナイバシャ湖の漁業に確実に影響を及ぼしている。魚卵や幼魚が狙われており、今後は漁獲量が減るかもしれない」とIUCNのハワード氏。

 国際農業生物化学センター(CABI:Centre for Agricultural Bioscience International)のアーン・ウィット(Arne Witt)氏は、「ザリガニ商売で潤っている人もいるが、にわか景気で先行きは暗い。繁殖力が強く急激に増加する反面、エサを食い尽くせば激減する」とコメントする。同氏は、アフリカ支部で外来種部門のコーディネーターを務めている。

 アメリカザリガニは、ケニアの都市ナイロビ、キアンブ、リムル周辺のダムにも移入された。寄生虫を運ぶカタツムリの駆除が目的だった。

 しかし、アースダム(土堰堤)や河川、湖沼の岸辺に巣穴を掘るため、地域のインフラや景観に被害が出ている。用水路の水漏れ、ダムの崩壊、土手の浸食などが発生しているという。

◆歩いて移動、何でも捕食

 アメリカザリガニは適応力が高く、移動能力も優れている。IUCNのハワード氏によると、陸上でも数時間生きることができるので、雨の降る夜など数キロも歩くケースがあるという。「河川の下流へ簡単に移動する。歩きや泳ぎで湖に流れ込む川をさかのぼることも可能だ。釣りエサや食用、水族館の展示用に人間が連れ出す場合もある」。

 また、CABIのウィット氏によると、プランクトンから両生類まで何でも食べるため、移入先でエサが変わっても困らないという。「ザリガニが原因で多くの水生植物が姿を消した」と同氏。この雑食性が災いし、魚類や鳥類など他の捕食生物のエサも減少してしまう。

◆管理が必要

 IUCNのハワード氏によると、調査資金が不足しているので、アフリカでの正確な繁殖状況を把握できていないという。小さな湖沼なら、捕獲や毒で個体数を抑制できるだろう。移動防止用のフェンスなども考えられるが、正確な分布と個体数がわからなければ効果を期待できない。

「ナイバシャ湖ではホテイアオイなどの水生雑草を刈り取れば、鳥がザリガニを捕食しやすくなる。長期的には、ザリガニ固有の病気の導入も必要となるかもしれない」とCABIのウィット氏は述べる。「さしあたり、アフリカ大陸ではザリガニの移動を食い止めるべきだ。罰則付きの法律で規制する必要がある」。

Photograph by David Keith Jones, Images of Africa Photobank/Alamy

文=Ochieng' Ogodo in Nairobi, Kenya