ホテルのサメが4年連続“処女懐胎”

2012.01.09
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野生のトラフザメ(タイの沖合)。

Photograph by Rodger Klein, Getty Images
 ドバイの豪華ホテル、ブルジュ・アル・アラブにあるレストランの水槽で暮らすメスのトラフザメが、4年連続で“処女懐胎”(単為生殖)を果たした。海洋生物学者のデイビッド・ロビンソン(David Robinson)氏によると、このようなサメは記録にないという。 世界最高の豪華さといわれるリゾートホテルの担当者たちは、ゼベダイが卵を産んだことはわかっていたが、トラフザメのオスと一緒ではなかったため孵化はしないと考えていた。しかし2007年、ゼベダイがオス不在で生殖したことをホテルのスタッフが発見した。

 ブルジュ・アル・アラブで水槽担当の支配人補佐を務めるロビンソン氏は、「実は卵を移動させていたところ、卵の中で何かが動いていることにひとりが気づいた。ライトで確認したところ、中に赤ちゃんがいた」とBBCに語っている。

「探してはいたものの、見つかることはないと思っていた。畏敬の思いだ」とロビンソン氏は話す。

◆サメの単為生殖は珍しくない?

 ゼベダイは単為生殖しており、つまりオスの精子を受精することなく卵が胚になっている。子どもは遺伝子がゼベダイにとても似ているが、DNAは生殖の過程で組み換えられており、完全なクローンではない。

 シュモクザメ、ツマグロ、テンジクザメの仲間など、さまざまな脊椎動物や多くの無脊椎動物で単為生殖が認められている。

 ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校の海洋生物学者デミアン・チャップマン(Demian Chapman)氏は、「いまや誰もがサメでこれを探しているが、だいたいは見つかるのではないだろうか」と話す。「いろいろなサメに可能なことからして、すべてのサメができるのだと考えるのが妥当だろう」。

◆進化上の優位性

 サメの単為生殖は、種が厳しい時を切り抜けるための適応進化である可能性がある。例えば、「住みたい場所でオスを探す必要がないなど、新しい生息場所でコロニーを形成する際に少し優位に働くかもしれない」とチャップマン氏は説明する。

「つがいになったときと比較すると子どもの数が少ないようなので、オスが見つかる場合ほど好ましくはない」。

 近親交配の究極形とも言える単為生殖は、子どもの遺伝子の多様性が低くなり、ひいては免疫システムが似通ってさまざまな脅威に対応できなくなるなど、いろいろな副作用が考えられる。

 しかし単為生殖は、「困難な環境にあるときや、個体群の密度が低くなったときには存続の方法になりえる」とチャップマン氏は言う。

◆野生サメも単為生殖するのか

 4年連続の単為生殖がわかっているのはゼベダイだけだが、単為生殖は実はサメにとって一般的な能力なのではないかとチャップマン氏は考えている。

 メスのサメの卵細胞は精子と出会わないと「一定割合が単為生殖で胚になる」、というのがチャップマン氏の推測だ。「何かが誘発するのではなく、ただ放置しておけばそうなるのではないか」とチャップマン氏は言う。

 単為生殖が野生のサメにも起きることはまだ証明されていないが、DNAの調査で立証されるかもしれないとチャップマン氏は話す。有性生殖で生まれた子どもは、各遺伝子にそれぞれの親に由来する2つのバージョンがある。無性生殖の場合、各遺伝子は1つのバージョンしかない。

Photograph by Rodger Klein, Getty Images

文=Dave Mosher

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