タテゴトアザラシの減少と温暖化

2012.01.09
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タテゴトアザラシの赤ちゃん。カナダ、セント・ローレンス湾で撮影。

Photograph by Brian J. Skerry, National Geographic
 地球温暖化の影響がタテゴトアザラシの子どもに及んでいるという初めての研究が発表された。 気温の上昇による海水の温暖化や嵐で海氷の破壊が進み、タテゴトアザラシが生後数週間を生き延びるのに必要な、しっかりとした海氷が減少している。

 カナダの水産海洋局でタテゴトアザラシの個体群の監視と評価を行っている海洋生物学者ギャリー・ステンソン(Garry Stenson)氏は、「厚さ約30~70センチの氷が海の60~90%を覆っているのがよい状態だ」と説明する。

 しかし1970年代以降、北極海周辺と北大西洋の海氷は10年に約6%の割合で減少を続けている。

 また、気候変動によって状態のよい海氷は減り続け、タテゴトアザラシの子どもの生存率は平均して年々、減少していくだろうと専門家はみている。

 研究チームを主導するデューク大学の海洋生物学者デイビッド・ジョンストン(David Johnston)氏によると、カナダでは2007年に、海氷の状況の悪化により、タテゴトアザラシの子どもの75%以上が死んだ。そして2010年には、ほとんどが生き残れなかったという。

◆タテゴトアザラシの生態

 タテゴトアザラシは絶滅の危惧まではされておらず、毛皮や肉を売るための狩猟が行われている。主な生息域が4カ所で、いずれも北半球に位置する。

 タテゴトアザラシはほとんどが、夏、秋、冬には餌を求めて北極圏の海域を移動していている。2月から3月には、妊娠したメスが北極圏近くの繁殖地に戻って、海氷の上で赤ん坊を産み授乳する。

 子どもはわずか10~12日ほどで離乳し、その間に体重がおよそ2倍になる。授乳を終えたメスは子どもを残し、次の受精のためにオスの群れが待つ海に戻っていく。

 離乳して氷上に残された子どもは、脂肪分の多い母乳を数週間かけて肉や骨にした後は、海に入り自分で食べることを学び始める。

◆タテゴトアザラシの減少を理解する

 気候変動の海氷への影響、そして海氷の減少のタテゴトアザラシへの影響を解明するため、ジョンストン氏の研究チームは2005年から大きな調査を3回行った。

 最初の2回の調査では、カナダにおける北大西洋振動の影響が調べられた。北大西洋振動とは、北大西洋上のアイスランド低気圧とアゾレス高気圧が双方とも強まったり弱まったりする現象のことで、北半球ではこれにより嵐が西から東へと移動する。

 北大西洋振動は「基本的に、嵐の強さとコース、そして北大西洋全体における海氷の形成と持続を左右している」とジョンストン氏は話す。「長期の影響を考える前に、まず短期の気候変動を理解する必要があった」という。

 そして3本目となる今回の報告で、北大西洋振動の変化、長期の気候変動、海氷とともに、アザラシの子どもの死亡率がまとめて論じられた。

 アザラシの子どもの死亡については、これまで定量的な情報が欠けていた。しかしニューイングランドでボランティアのグループがこの数十年間、地元の海岸を歩き、死んで打ち上げられたアザラシの数を報告していた。研究チームは今回、それを基に算出したアザラシの子どもの死亡数を、北大西洋振動の海氷への影響と比較した。

 その結果、アザラシの子どもの死亡数は、気候変動による北大西洋振動の揺らぎが引き起こす海氷の減少に影響されていることが明らかになった。

 カナダ水産海洋局のステンソン氏は、「子どもの死亡数に氷の悪い状況が影響していること、そして海氷が減少していることがわかる。このことを考慮しなければ、タテゴトアザラシの個体群の振る舞いは理解できない」と話している。

 今回の研究結果は、オンラインジャーナル「PLoS ONE」誌に1月4日付けで発表された。

Photograph by Brian J. Skerry, National Geographic

文=Dave Mosher

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