シカン遺跡で集団生贄の証拠を発見

2011.12.28
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「ワカ・ラスベンタナス」ピラミッド付近の集団生贄の跡地。人骨が多様な配置で並べられている。

Photograph courtesy A. Bryce
 ペルー北部にあるプレ・インカ時代のピラミッド付近から集団生贄の儀式跡が発見された。“頭部の切断”や“王室のビールパーティ”など、詳細の解明が進んでいる。古代ピラミッド「ワカ・ラスベンタナス(Huaca Las Ventanas)」の隣で人骨が発掘されたのは2011年8月。それ以来、15メートル四方の穴からさまざまな遺物が出土している。 ピラミッドは「シカン遺跡」の一部である。この地には、紀元900~1100年にペルー北部沿岸で栄えたシカン文化(ランバイエケ文化)の首都が置かれていた。 アメリカ、ユタ州オレムにあるユタバレー大学の生物考古学者で出土品を調査中のハーゲン・クラウス(Haagen Klaus)氏によると、人骨は100体以上で、裸のまま埋められていた。頭部のない骨も見つかったという。

 子どもと成人女性のペアが2組含まれているが、大部分は成人男性だった。

「大勢が集団で埋葬されているが、シカン人は争いを好まなかった」とクラウス氏は強調する。シカン文化は貿易を基盤とする経済力で帝国を築き、紀元1000年頃に絶頂期を迎えた。勢力は現在のエクアドルやペルーなど数千キロに及んでいた。

「発見された人骨はすべて、自発的に儀式に参加した地元住民と考えられる。“新しい生命がこの世に誕生できるように”死を祝福する儀式だ」とクラウス氏はメールでコメントを寄せた。

「シカン遺跡は聖地であり、先祖を崇める最も神聖な宗教儀式だけが行われていた。集団生贄の跡と解釈するのが妥当だろう」。

 発掘の主任考古学者ホセ・ピニーリャ氏によると、シカン文化の他の遺跡とは異なり、遺骨の配置に特定のパターンがないという。ピニーリャ氏は、シカン国立博物館長カルロス・エレーラ氏と共にプロジェクトの共同ディレクターを務めている。

「腕や足を広げて放り投げていたり、注意深く折り曲げて平らに並べていたりする。膝を大きく曲げた状態もあり、変化に富んでいる」。

穴の東端にあるビール醸造所で人骨1体が見つかった。折りたたまれ、チチャ(トウモロコシのビール)の醸造と給仕に使われた高さ1.3メートルの陶器製の瓶(かめ)の上に、うつぶせの状態で置かれていた。チチャは古代アンデス文明の葬儀の宴で一般的な飲み物である。

 醸造所があることから、厳粛な葬儀の宴が開かれたと考えられる。大量のチチャを参加者が飲み、死者にも捧げられたはずだ。

 発見された人骨の一部には頭部がなかった。また、発掘地内の小さな穴からは、切断された頭部が20個以上見つかっている。しかし、頭のない人骨と頭蓋骨との直接的な関係はまだ解明されていない。

ユタバレー大学のクラウス氏は、「刃物の跡がないか研究室で調べる予定だ。埋葬時などに頭部が外れてしまったのか、亡くなったばかりの遺体から切断したのか明らかにしたい」と話す。

 遺跡には、シカンの神の頭をかたどった陶器や、頭の彫刻も散乱していた。陶器は副葬品の精巧な器の飾りとして使われ、彫刻はチチャ用のカップに施されていたと見られている。

 リャマ、ピューマ、サル、カメ、クマ、人間などの陶器製の頭も出土している。

Photograph courtesy A. Bryce

文=John Roach

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