太平洋の津波ゴミ調査隊員、一般公募

2011.12.16
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海のゴミが集まる「ゴミベルト」の調査に有料で参加した市民(下)(資料写真)。

Photograph courtesy Stiv Wilson, 5gyres.org
 3月11日に三陸沖で発生したマグニチュード9.0の巨大地震。日本の沿岸部には巨大な津波が押し寄せ、膨大な量の“ゴミ”が海に引きずり込まれた。 家や車、家電製品などが、場合によっては原形をとどめたまま海を漂流、北太平洋の海流にとらわれ、海洋ゴミの集まる海域「ゴミベルト」に到着し始めている。世界中の研究者がその行方を追う中、調査隊に有料で参加する一般人を募集する環境団体が登場した。

 海洋のプラスチックゴミ集積を研究しているパンゲア・エクスプロレーションズ(Pangaea Explorations)、アルガリタ海洋研究所(Algalita Marine Research Foundation)、ファイブ・ジャイルズ・インスティテュート(5 Gyres Institute)の合同企画である。一般公募で選ばれた調査隊員は2012年5月、研究者とともに全長22メートルの帆走ヨット「シードラゴン号」に乗り込む。

 調査航海は2回実施され、第1回は23日間の予定。マーシャル諸島を出発し、北太平洋還流の西側にある渦を通過、東京に到着する。だたし、この往路では津波ゴミに遭遇する可能性は少ないという。

 32日間の第2回では、東京を出発してゴミの漂流経路をたどりながら、ハワイを目指す。国際太平洋研究センター(IPRC)によると、来年初頭にもハワイ沿岸に津波ゴミが漂着すると予測されている。

 参加費用は第1回が1万3500ドル(約105万円)、第2回は1万5500ドル(約120万円)となっている。まだ空きがあるようだ。

 アルガリタ海洋研究所のジーン・ギャラガー氏は、「安くはないが、ほとんどは食料、燃料、研究費、保険で消え、利益はまず出ない。有料一般隊員の多くは船員としての経験がないので、保険は特に重要だ」と話す。

◆人々の生活の証し

 航海の目的は津波ゴミの調査で、回収の予定はない。ただしギャラガー氏によると、小さい物で持ち主が特定できる場合には、返還できるよう最大限の努力を払うという。

 日本ではまだ震災の傷が癒えておらず、行方不明者の捜索も続けられている。このような時期の有料“ゴミツアー”は批判を浴びるかもしれない。しかし、日本政府観光局(JNTO)ニューヨーク事務所は、「旅行ではなく科学調査であり、反感を招くことはないだろう」とコメントしている。調査隊も、“人々の生活の証し”を軽んじることなく、慎重に作業を進めると約束している。

 航海は4人の熟練船員を含めてわずか13人で行われる。参加者はゴミベルト海域での見張りから、操船、料理、掃除、科学データの収集まで何でも担当しなくてはならず、寝室も大部屋になる。なお、衛星経由でインターネットは利用できるという。

◆プラスチックの振る舞いの調査

 海洋ゴミの調査は以前にも一般公募が行われており、在野の研究者や映画撮影隊、アーティストなどが参加している。

津波による海洋ゴミは、特に重要な調査対象となる。通常の海洋汚染とは異なり、「いつ、どこから来たのか」がはっきりしているからだ。この情報は、プラスチックなど、地上からのゴミが海でどのように振る舞うのかを解明する手掛かりとなる。

◆津波ゴミはまだ無傷の可能性も

 今年9月には、ロシアの船が無人の漁船を発見。地震と津波の被害が特に大きい福島県から流されたと判明した。また、ハワイのミッドウェー環礁から北西480キロで、テレビや冷蔵庫が見つかっている。津波ゴミが集まると予測されている海域の外縁にあたる。ギャラガー氏は、「航海ルートは既にほとんど決定しているが、復路ではミッドウェー環礁に寄って海岸に打ち上げられたゴミを調査するプランもある」と話す。

 アルガリタ海洋研究所の重役マリエータ・フランシス氏は、「太平洋ゴミベルトなどに浮かぶ通常のゴミと違って、津波ゴミはかなり大型だろう。まだ摩滅や分解が進んでいないはずだ」と述べる。

 海洋ゴミは海洋生物にとって深刻な危険物だ。誤って摂取したり、絡まって動けなくなる場合もある。調査航海は海洋生物を守るためにも重要であり、その上で思い出の品や場合によっては津波犠牲者の遺体回収にもつながる可能性もある。

Photograph courtesy Stiv Wilson, 5gyres.org

文=Meghan Miner

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