台風8号「モーラコット」が台湾南部を襲った2009年8月、洪水によって孤立した地域から橋を伝って避難する住民たち。

Photograph by Peter Parks, AFP/Getty Images
 豪雨が地震の引き金を引く可能性がある。こうした事例を、フロリダ州にあるマイアミ大学のシモン・ウドウィンスキ(Shimon Wdowinski)氏は「災害の引き金を引く災害」と呼んでいる。 ウドウィンスキ氏が最初に暴風雨と地震の関連に気付いたのは昨年のことだ。2010年初頭にハイチに壊滅的被害をもたらしたマグニチュード7.0の地震は、この地域が複数のハリケーンや熱帯暴風雨による豪雨被害を受けたわずか18カ月後のことだった。

 また別の例を挙げると、2009年にマグニチュード6.4の地震が台湾を襲ったが、それもこの地域が台風8号「モーラコット」により5日間で2.9メートルという降雨の被害を受けた7カ月後の出来事だ。

 分かりやすく例えるなら、「サンフランシスコの(年間の)平均降雨量の約5倍の雨が5日間で降ったことになる」と、ウドウィンスキ氏は12月9日、サンフランシスコで開催されたアメリカ地球物理学連合の秋季大会で説明した。

◆降雨による侵食が地震を誘発

 降雨と地震の関連を確認するため、ウドウィンスキ氏は台湾の過去50年分の地震と気象の記録を調べた。この地域は過去に何度も、深刻な暴風雨と地震の被害を受けている。

 すると、1999年に台湾で起きたマグニチュード7.6の地震の3年前にも、台風9号「ハーブ」によって2メートルという豪雨がもたらされていたことが分かった。

 ウドウィンスキ氏の分析によって、台湾の大地震(ここではマグニチュード6以上のものを指している)の大部分は、このような暴風雨から4年以内に起こっており、暴風雨の影響がなかった場合に比べて5倍の確率だということが明らかになった。

 降雨の重量が直接、地震の引き金を引いたというわけではない。直接の引き金は、その後に起こる侵食だ。これは、地滑りが後続の暴風雨によって少しずつ海へ押し流されて起こるものだ。

 その結果、下にある岩石の層の「負荷が少なくなり、断層が動きやすくなる。これは小さな変化だが、地震の引き金を引くには十分なようだ」とウドウィンスキ氏は言う。

 ただし、本来ならば地震が起きないはずの地域で、台風のせいで地震が引き起こされるようなことはないとウドウィンスキ氏は付け加える。

「台風はただ(地震の)時期を決定するだけだ」とウドウィンスキ氏は言う。地震を引き起こす最大の要因は、プレートの緩やかな変動である。

◆ヒマラヤ山脈一帯のモンスーンも地震に関連

 別の研究グループが、ヒマラヤ山脈一帯でも同様の効果を確認している。ヒマラヤ山脈のインド側では、夏のモンスーンによって多量の降雨がある。

 ヒマラヤ山脈は、インドプレートが北側のユーラシアプレートに衝突して形成された巨大な断層帯だ。モンスーンが訪れると、インドの低地には大量の水が流れ込む、とカリフォルニア州パサデナのカリフォルニア工科大学の大学院生トーマス・アダー(Thomas Ader)氏は言う。

 この水分の非常な重さによって、インドプレートは圧力を受けてわずかにたわみ、その結果、プレートの端の部分がわずかに動くのだという。「大型の本を持って、真ん中のところで曲げたとしよう。端では、ページが1枚ごとに少しずつずれていこうとする」とアダー氏は言う。

 アジアの雨季には、プレートがたわむことで、プレートテクトニクスによる断層の負担の蓄積が相殺され、短期的に見て地震のリスクは低減する。だが冬にはこれが逆転する。低地が乾燥し、プレートのたわみが元に戻る。これによって、地震の発生率が上昇する。 今のところ、この研究を地震の予測に役立てるすべはない。

 それでもウドウィンスキ氏は電子メールによる補足説明の中で、「次に台湾中部にきわめて降雨量の多い台風が到来したら、その後は地震のリスクが高まるという一般的な予報を出すことは有益だろう」と書いている。

Photograph by Peter Parks, AFP/Getty Images

文=Richard A. Lovett