水星にも水が存在、証明間近

2011.12.15
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水星の北極付近。一部のクレーターは可視光のもと(上)ではくっきりとした影を作るが、レーダー画像では明るく輝いている。

Optical image courtesy NASA/JHUAPL/CIW; radar image courtesy NAIC/Arecibo
 惑星上の水といえばこれまで火星に目が向けられてきたが、太陽に最も近く、熱く不毛な惑星、水星にも水が存在するという証拠が次々と見つかっている。 天文学者らによると、NASAの水星探査機メッセンジャーから送られてきた最新のデータに基づいて、水星の両極地方に見られる不思議な明るい点が、水の氷による斑点であることを近く証明できそうだという。

 水星に氷、というのは奇妙に聞こえるかもしれない。何といっても水星の表面は、太陽に向いている場所では鉛も融けるほどの高温なのだ。

 しかし、水星の自転軸はそれほど大きく傾いていないため、極地方のクレーターの底には、永久に太陽の光が届かずに影になる部分が存在する可能性が指摘されていた。

 水星には熱を閉じ込める大気がないため、常に影になっている場所があれば”コールド・トラップ”になりうる。コールド・トラップとは、惑星間空間から流れ込んでくる物質の破片や蒸気が、成長する霜の中に恒久的に閉じ込められてしまう領域のことだ。

 このようなコールド・トラップは、月の南極付近で見つかっている。最近、月には大量の水の氷が存在することが明らかになった。

 1991年に、水星の両極地方の一部が明るく輝いているという観測結果が得られた。極地が白いからではなく、レーダー波を強く反射するためだった。これは水または氷の存在を示す典型的な徴候だ。

 カリフォルニア州にあるNASAエイムズ研究センターの惑星学者アンソニー・コラプリート(Anthony Colaprete)氏によると、この白い斑点にはかなりの量の氷が含まれているかもしれないという。「レーダーがこのように反射するには、純粋な氷(おそらく純度90%以上)が必要だと大半の学者は考えている。(それは)数メートル以上の厚さになる」。コラプリート氏は今回の研究には参加していない。

◆影の中を探る

 NASAのメッセンジャー計画の目的の1つは、水星のコールド・トラップの中を覗き込むことにある。

 メッセンジャー計画のメンバーで、ワシントンにあるカーネギー研究所の惑星学者ショーン・ソロモン(Sean Solomon)氏は、メッセンジャーのデータに基づいて新たに行われた2つの研究から、水星のコールド・トラップとレーダー画像で明るく輝く斑点との強い関連性がすでに明らかになっていると説明する。

 1つの研究では、メッセンジャーのレーダー高度計のデータから水星の北極付近の3次元モデルを作り、太陽光のもとでの自転シミュレーションを行った。その結果、実際に水星の北極には永久に日が当たらない影の領域があるらしいことが判明し、「(それらの)領域の場所はレーダーに映る明るい堆積物と一致した」という。

 2つ目の研究では、メッセンジャーから送られてきた6カ月分の写真を使い、南極地方を調査した。ソロモン氏によると、この南極の研究でも「レーダーで明るい堆積物に見える場所がすべて実際に恒久的な影である」ことがはっきりしたという。

◆中性子のスピードが水の存在を示す

 しかし、この明るい点が本当に水の氷なのか、まだ最終的な結論は出ていない。コールド・トラップに捕らえられるのは水だけではないからだ。二酸化硫黄でも同じように明るく見える。

 次に取るべき手段は、水星表面から放出される中性子を調べて、この惑星の水素に注目することだと、ソロモン氏は説明する。

 放出される中性子のエネルギーレベルの違いをマッピングすることで、水星の水素の量を決定できる。水星の地中の水素により、中性子が減速し、エネルギーが低下するのだ。 そして、太陽系において地中の水素の源として最も可能性が高いのは、H2O、すなわち水である。

◆水星の調査はこれから

 現在科学者は、中性子のエネルギー変化のマッピング精度を上げるために、メッセンジャーの中性子検出装置を調整しているところだ。

「3、4カ月以内に結果を出せる」とソロモン氏は言う。だが、水素が見つかったからといって、それが水の存在の決定的な証拠になるわけではない。

 月の水の存在については、最終的な確認は、廃棄するロケットを永久影を持つクレーターに衝突させ、飛び散った破片を観測することで行った。今のところ、水星でこのような実験を実施することはできない。

 月の衝突実験に参加したブラウン大学の惑星学者ピーター・シュルツ(Peter Schultz)氏は、「水星で何が見つかるかは、まだ誰にもわからないのだ」と話している。

Optical image courtesy NASA/JHUAPL/CIW; radar image courtesy NAIC/Arecibo

文=Richard A. Lovett

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