嵐雲の上に現れたスプライトをとらえた動画の一コマ。

Image from video copyright NHK via AGU
 雷雲の上に発生する高高度放電現象「スプライト」、「エルブス」、「ブルージェット」。アメリカ中西部でハイスピードカメラを使用し、初めて立体的な映像の撮影に成功した。雲間放電もとらえたという。 スプライトは1989年に初めて観測された。爆発的な電気エネルギー現象で、約80キロ上空の中間圏で発生。積乱雲の上から宇宙空間まで達することもある。

 アラスカ大学フェアバンクス校の宇宙物理学者ハンス・ステンバエク・ニールセン(Hans Stenbaek-Nielsen)氏によれば、スプライトは巨大な爆発だが、わずか10ミリ秒で終わってしまうという。

 また、スプライトは非常に明るい。ステンバエク・ニールセン氏はサンフランシスコで開催されているアメリカ地球物理学連合の会合で、「夜空の金星よりも目立つ」と説明した。

「20年前まで誰も気付かなかったとは信じられない。高高度を飛行中のパイロットが目撃したにも関わらず、報告しなかった可能性がある」と同氏は語る。「勤務中の不思議な体験をわざわざ自分から認めるパイロットはいない。精神状態を疑われかねないからだ」。

 2010年夏、ステンバエク・ニールセン氏は、日本放送協会(NHK)が“宇宙の渚”という番組のために実施した観測に参加した。チームは小型ジェット2機にハイスピードカメラを積み込み、雷雨が引き起こすスプライトを追ってアメリカ中西部の上空を飛んだ。

 スプライトなどの発光現象に巡り会うと、2つの角度から毎秒1万コマ撮影し、立体的な映像を初めて作成した。

◆「目を楽しませてくれる」だけ?

 チームに参加した北海道大学の宇宙物理学者、高橋幸弘氏は、「20年前から研究が続いているが、いまだメカニズムが解明されていない」と話す。

 高橋氏とステンバエク・ニールセン氏によれば、莫大なエネルギーが関係しており、雷雨の上にある強力な電場が放電を誘発している可能性があるという。

 さらに、ステンバエク・ニールセン氏は放電が、雷雨と電離層の間に電気の通り道を生み出していると推測する。電離層は大気の上層部にある薄い層で、高度約1000キロまで広がっている。

 コロラド州にあるアメリカ空軍士官学校の宇宙物理学者で、チームの一員でもあるジェフ・マクハーグ(Geoff McHarg)氏は、「昔から、地上で何が起ころうと雲の上には影響しないと教えられてきた」と述べる。

「大気圏の中程には中間圏という分厚い層があるが、研究すべき現象は起こらないというのが、私が大学院生だったころの常識だ。しかし、実はスプライトが発生する場所と知れば、現在では立派な研究対象となる」とマクハーグ氏は話す。

 地球の大気に及ぼす影響の重大性や、宇宙環境との相互作用についてはまだ解明されていない。

 ステンバエク・ニールセン氏は、「とても美しいのは確かだけど、それ以上の意味はないのかもしれない。虹と同じようにね」と語る。

Image from video copyright NHK via AGU

文=Richard A. Lovett in San Francisco