アシナガバチ、互いの顔を見分ける

2011.12.02
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
アシナガバチの一種、Polistes fuscatusの顔はバラエティーに富んでいる。

Diagram courtesy Science/AAAS
 アシナガバチの一種、Polistes fuscatusは互いの顔をはっきり見分けて記憶できることが明らかになった。 一般的に、生物は同一種の個体をさまざまな方法で見分けている。「人間などにとっては顔が極めて重要な役割を果たす」と、研究チームの一員でミシガン大学アナーバー校の博士課程に所属するマイケル・シーハン氏は話す。

「複数の研究によると、顔とそれ以外のものを見たときでは、全く異なる方法で脳の処理が行われる」とシーハン氏は説明する。「脳は顔のイメージを独特の方法で処理する。P. fuscatusも同じだとわかった」。

◆顔を覚えれば報酬が得られる

 シーハン氏と指導教員のエリザベス・ティベッツ氏は、P. fuscatusとP. metricusを細長いT字形の迷路に入れる実験をした。P. metricusはP. fuscatusの近縁種だが、はるかに単純な社会構造で暮らす。

 迷路内には小さな電流が流れているが、一部の“安全地帯”には流れていない。迷路には1度に1匹を入れ、同一種の個体の顔画像を2つ見せた。2つの画像は左右に表示される。

「画像は道しるべのような役割を果たした。どちらに行けば報酬を得られるのか。つまり、安全地帯にたどり着けるのかを知ることができる」とシーハン氏は述べる。

 顔の画像ABと安全地帯の場所は絶えず変えたが、「画像Aを常に安全地帯と関連させるようにした」。

「その結果彼らは、“この顔の方に行けばいいことがあるが、もう一つの方には何の利益もない”と学習した」。

 単純な形など顔以外の画像を使用したところ、学習に時間がかかり、結果も良くなかった。顔に特別な反応を示している証拠だ。

◆顔の識別は平和維持に役立つ

 P. fuscatusは特徴的な顔をしており、互いの顔を見分けて覚える能力がある。これらは多数のコロニーから成る社会構造と関係している可能性が高いとシーハン氏は指摘する。

「複数の女王がいて、どの個体も生殖を望んでいる。皆が支配者になりたいと思っているのだ。互いを認識できれば、誰が誰を負かしたか、誰が階層の上位にいるかといったことがわかり、平和維持につながる。

 互いを見分けることができなければ、もっと攻撃性があるはずだ」とシーハン氏は話す。

 一方、P. metricusのコロニーには女王が1匹しかいないので、互いを見分ける必要はないという。「当然、P. metricusの顔はよく似ており、顔を覚える能力もない」。

◆人とアシナガバチの類似点は?

 シーハン氏は次の研究として、人の顔認識能力をP. fuscatusと比べてみたいと考えている。アシナガバチの目は哺乳類と全く異なり、脳もはるかに小さく、あまり細分化していないという。

 研究論文は「Science」誌12月2日号で発表された。

Diagram courtesy Science/AAAS

文=Brian Handwerk

  • このエントリーをはてなブックマークに追加