中国で発掘された先史時代の人間の頭蓋骨に、強烈な殴打の跡が見つかった。人間同士の暴力の痕跡としては最も古いものの1つだが、同時に古代人類には暴力を振るう一方でケガ人を看護する習慣があったことも示している。 今回の発見は、12万6000年前のものとみられるマバ人のCTスキャン調査に基づいている。マバ人は、1953年に広東省の馬ば(まば、「ば」は土偏に霸)付近で人骨が見つかったことからこの名前で呼ばれる。
スキャンにより、このマバ人の頭蓋骨に、鈍器による外傷で生じた骨折の跡が見つかった。今回の研究では、被害者は石や重い骨、木の塊で殴られたものと推定している。
この研究に参加した南アフリカにあるウィットウォータースランド大学のリン・シェパーツ(Lynne Schepartz)氏は、「この殴られた人物は相当の重傷を負ったはずだ。強烈な殴打だったと考えられる」と述べている。
この殴打により、被害者は出血し、脳震盪を起こした可能性が高い。これにより吐き気、嘔吐を覚え、さらには脳に損傷を被った恐れもあり、被害者はなすすべなく、うつ伏せに横たわっていたはずだとシェパーツ氏は推測している。
しかし今回のスキャン調査では、頭部の傷は最終的には治癒し、このマバ人はケガの後も何年も生き延びたことも判明している。つまり、被害者はこのケガについて手当てを受けた可能性が高い。
シェパーツ氏の解説によれば、「頭蓋骨は内側にへこんでおり、軟組織を圧迫している。それでも、この人物はケガの後もかなり長い間生き延びており、(頭部への殴打は)直接の死因ではない」という。
◆周りの人々の助けで回復へ
事故による負傷という仮定も全く否定はできないが、現代の法医学の見地や他の証拠から、これは人からの暴力を受けた可能性が高いと研究チームは報告している。
「例えば高いところから落ちたとして、その衝撃でこのように頭蓋骨の非常に限られた部分のみを損傷するとは考えにくい」とシェパーツ氏はコメントしている。
頭蓋骨を骨折したにもかかわらず、このマバ人は40代まで生き延びたことが、骨の調査から判明している。先史時代の人類としては、十分に長生きと言える年齢だ。
研究チームによれば、今回の発見は、ネアンデルタール人をはじめとする古代人類が、暴力に訴えることもたびたびではあったものの、病人や弱者の世話をしていたという、これまでの化石人骨の研究から判明していた事実とも整合しているという。
殴打されたマバ人がケガから回復するまでには、数週間とは言わないまでも、数日はかかったはずだと、シェパーツ氏は指摘した。
「恐らくかなりの安静を余儀なくされ、食事や調理には介助が必要だっただろう。この時代の狩猟採取社会では、(ケガをすると)他者の助けに頼るしかなかったはずだ」。
この古代人類の頭蓋骨に見つかった殴打跡に関する研究は11月21日、「Proceedings of the National Academy of Sciences」誌の早版にオンライン掲載された。
Diagram courtesy University of the Witwatersrand
スキャンにより、このマバ人の頭蓋骨に、鈍器による外傷で生じた骨折の跡が見つかった。今回の研究では、被害者は石や重い骨、木の塊で殴られたものと推定している。
この研究に参加した南アフリカにあるウィットウォータースランド大学のリン・シェパーツ(Lynne Schepartz)氏は、「この殴られた人物は相当の重傷を負ったはずだ。強烈な殴打だったと考えられる」と述べている。
この殴打により、被害者は出血し、脳震盪を起こした可能性が高い。これにより吐き気、嘔吐を覚え、さらには脳に損傷を被った恐れもあり、被害者はなすすべなく、うつ伏せに横たわっていたはずだとシェパーツ氏は推測している。
しかし今回のスキャン調査では、頭部の傷は最終的には治癒し、このマバ人はケガの後も何年も生き延びたことも判明している。つまり、被害者はこのケガについて手当てを受けた可能性が高い。
シェパーツ氏の解説によれば、「頭蓋骨は内側にへこんでおり、軟組織を圧迫している。それでも、この人物はケガの後もかなり長い間生き延びており、(頭部への殴打は)直接の死因ではない」という。
◆周りの人々の助けで回復へ
事故による負傷という仮定も全く否定はできないが、現代の法医学の見地や他の証拠から、これは人からの暴力を受けた可能性が高いと研究チームは報告している。
「例えば高いところから落ちたとして、その衝撃でこのように頭蓋骨の非常に限られた部分のみを損傷するとは考えにくい」とシェパーツ氏はコメントしている。
頭蓋骨を骨折したにもかかわらず、このマバ人は40代まで生き延びたことが、骨の調査から判明している。先史時代の人類としては、十分に長生きと言える年齢だ。
研究チームによれば、今回の発見は、ネアンデルタール人をはじめとする古代人類が、暴力に訴えることもたびたびではあったものの、病人や弱者の世話をしていたという、これまでの化石人骨の研究から判明していた事実とも整合しているという。
殴打されたマバ人がケガから回復するまでには、数週間とは言わないまでも、数日はかかったはずだと、シェパーツ氏は指摘した。
「恐らくかなりの安静を余儀なくされ、食事や調理には介助が必要だっただろう。この時代の狩猟採取社会では、(ケガをすると)他者の助けに頼るしかなかったはずだ」。
この古代人類の頭蓋骨に見つかった殴打跡に関する研究は11月21日、「Proceedings of the National Academy of Sciences」誌の早版にオンライン掲載された。
Diagram courtesy University of the Witwatersrand