バイキングの“太陽の石”、正体解明か

2011.11.10
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透明度の高い方解石の一種、「アイスランドスパー(氷州石)」。バイキングはこの石を使って船の方位を把握していた可能性があるという。

The Natural History Museum / Ala
 大昔のバイキングは、透明度の高い方解石の結晶「アイスランドスパー(氷州石)」を使い、方位を把握していた可能性があるという。 アイスランドには、バイキングは空が曇っているとき、「サンストーン(太陽の石)」と名付けた石を方位磁針代わりにして船の舵を取っていたという伝説がある。 この石によって、太陽光の偏光度を検出できたと考えられている。

 自然光は、あらゆる方向に振動する光が混合している。結晶や霧などの物質を通過すると、規則的な振動に変わって特定の方向に向きが変わる。これを偏光という。

 太陽光は大気を通過した後に偏光して方向が変わる。光の偏光を感知する能力は、ハチなどの生物に生来的に備わっているという。

 1969年にはデンマークの考古学者が、「バイキングはサンストーンを使って光の偏光を検出していた可能性がある。日時計や星の位置を知る補完手段として、航海に活用していたのかもしれない」と指摘している。

 以来、数々の研究者がサンストーンの用途に関する研究を進めてきたが、伝説をいくら調べてもわからなかった。

◆方解石と偏光

 そして今回、フランスのレンヌ大学に所属する物理学者ギー・ロパール(Guy Ropars)氏が、バイキングのサンストーンと考えられる鉱石で実験を行った。1592年、エリザベス朝時代に沈没した「オールダニー(Alderney)」というイギリス船から最近発見された、アイスランドスパーの破片である。

 ロパール氏のチームは、レーザー光をアイスランドスパーの破片に照射。偏光された光とそうでない光が分割される様子を分析した。アイスランドスパー(方解石の結晶)には、透過した光が複屈折する特徴がある。入射した光が、結晶を通過後に2つの光線に分けられる。つまり、結晶を通して向こう側を見ると物が2重に見える。

 光線を照射しながらアイスランドスパーの向きを変えてみると、ある1点でのみ、2つの光の強度が同じになった。また、光源の位置によってその角度は変わることがわかった。

 天気の良い日に太陽の位置を示す印をパーに書き込んでおけば、空が曇ってもその印を頼りに太陽の位置を把握することができる。曇りの日には、アイスランドスパーに入射して2本に分かれた光の強さを見比べていたようだ。

◆方位の把握には“最適”

 同チームはその後20人のボランティアを募り、曇りの屋外で交代にアイスランドスパーを観察させた。雲の向こうに隠れている太陽の位置を、どの程度正確に把握できるかを測定するためである。すると、誤差1度以内の精度で突きとめられることがわかった。

「研究に直接関わったわけではないが、今回の結果から、太陽の位置を把握するのにアイスランドスパーが最適だと言える。精度もかなり高い」と、スウェーデンのルンド大学に所属する生態学者スザンヌ・アケソン氏は話す。

 2010年にアケソン氏のチームは、局所的な気象状況が、北極地方での空の偏光に影響を及ぼしていた可能性を指摘した。バイキングが方位を把握する際にも考慮する必要があっただろう。

「だが、この鉱石を利用した方法が、実際にバイキングの時代に広く使われていたのかは不明だ」と同氏は話す。この点に関しては、物理学でも答えが出ないだろう。 今回の研究の詳細は、11月2日公開の「Proceedings of the Royal Society A」誌オンライン版に掲載されている。

The Natural History Museum / Ala

文=Lucas Laursen

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