ポンペイ遺跡で相次ぐ崩壊

2011.11.09
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ポンペイでは2010年11月に一部の壁が崩壊して以来、建築物の問題が続いている。

Photograph by Roberto Salomone, AFP/Getty Images
 イタリアの世界遺産ポンペイで2011年10月、主要な壁の一部が倒壊した。現在のイタリア南部ナポリに近いポンペイは、1世紀のベスビオ山噴火で埋没した古代ローマ都市。昨年から遺跡の崩壊が相次いでおり、専門家は「危機的状況」と憂慮している。 観光客が訪れるエリアからは離れているが、今回の崩壊が契機となり、欧州連合(EU)は保全費用として1億500万ユーロ(約113億円)の提供を約束した。

 最近のポンペイは数々のトラブルに見舞われている。2010年11月、「剣闘士の家(Schola Armaturarum)」が水の浸潤により一夜にして全壊。古代ローマの剣闘士たちが練習に使っていた大きな建物だった。そのわずか数週間後には、「道徳家の家(Casa del Moralista)」を守る長さ12メートルの壁が大雨で崩落した。

 ついこの間の10月下旬には、悪天候が災いして外周の壁が一部で落下した。

◆ポンペイは「危機的状況」

 昨年の「剣闘士の家」の崩壊後、ユネスコは調査チームを派遣。フランス国立科学研究センターの考古学者で調査団メンバーのアリックス・バーベット(Alix Barbet)氏は、「一刻を争う状況だ。問題が山積している」と述べる。

 ユネスコの報告書によると、遺跡の劣化は過度の湿気と定期的な保守作業不足が原因という。伸びたツタが広い範囲で遺跡を覆っている状況も良くない徴候だ。

「遅れている保守作業にすぐ取り組む必要がある。同時に排水設備を改善し、雨や地下水を速やかに排出して損傷を防がなくてはならない」と報告書は指摘する。

 古代ローマ専門家でペルージャ大学の元考古学教授フィリッポ・コアレッリ(Filippo Coarelli)氏は、「天候によるダメージを最小限に留めるには、継続的な保全業務が欠かせない」と説明する。

「遺跡は広大だ。道路や民家、公共施設と40ヘクタールを越える面積をベテラン作業員5人で管理しているが、人数がまったく足りない」。

 EUからの資金注入が予定される中、当局は不十分な保守管理の改善を目指している。

 考古学管理官テレサ・エレーナ・チンクアンタクアットロ(Teresa Elena Cinquantaquattro)氏は、「遺跡の保存状態を監視し続ける。状態の悪い建物を保護し、自然劣化の進行を抑えなければ。いずれは、多数の民家や歴史的建物の修復にも着手したい」と述べる。

◆続々と訪れる観光客

 西暦79年に埋没した豊かな商業都市は、18世紀中頃から徐々に発掘が進んだ。時が止まったような風景は数世紀にわたり旅行者を魅了し続けている。

 最近の相次ぐ崩壊にも関わらず客足は途絶えない。「来訪者数は増え続けている。2010年には230万人以上に達した」とチンクアンタクアットロ氏は語る。

 考古学者コアレッリ氏によると、公開されているエリアは全体のごく一部で、管理は行き届いているという。「崩壊現場は人が踏み入れない場所なので、危険はまったくない」。

◆ぜひ訪れたいポンペイ周辺の観光地、ベスト3

1. ヘルクラネウム:
 古代ローマのリゾート地で、ポンペイと同じく西暦79年にベスビオ山の火砕流に埋まった。ポンペイよりも小さな町で、保存状態もよい。

2. ポッペアの別荘:
 古代ローマ皇帝ネロの2番目の妃ポッペアが住んだ邸宅。ベスビオ山の噴火で被害を受けた。

3. スタビエ:
 古代ローマの小さな港町。博物学者ガイウス・プリニウス・セクンドゥスは、西暦79年の噴火をスタビエで観察中に亡くなったとされる。

Photograph by Roberto Salomone, AFP/Getty Images

文=Maria Cristina Valsecchi

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