バージニア州、シェナンドー国立公園のコヨーテ(2011年6月撮影)。

Photograph by Elijah Goodwin, Whimbrel Nature Photography
 アメリカでコヨーテとオオカミの雑種が生息域を拡大している。DNA研究によると、東海岸沿いに南下中のようだ。 北米大陸に広く分布するコヨーテは徐々にアメリカ中部から東進し、五大湖周辺ではオオカミとの交雑が確認されている。DNAと頭蓋骨の調査から、ニューヨーク州やペンシルバニア州など中部大西洋沿岸地域では、既に繁殖能力のある雑種が生まれているようだ。

 今回、コヨーテの糞のDNA分析を実施したところ、さらに南のバージニア州で初めて雑種が見つかった。北東部のニューイングランド地方からアパラチア山脈に沿って南下したと考えられる。また、南東の州に進む別の移動ルートも特定された。

 研究責任者でバージニア州フロントロイヤルにあるスミソニアン保全生物学研究所(SCBI)の研究フェロー、クリスティン・ボザース(Christine Bozarth)氏は、「中部大西洋沿岸地域へ進出する2つの“波”がある。この地域はコヨーテ流入の終着点だ」と話す。「特にバージニア州北部は移動の合流地点になっているようだ。食料が豊富な郊外で個体数が増えている」。

◆高い順応性で生息域を拡大

 コヨーテは元々、ロッキー山脈からミシシッピ川までのアメリカ中部のほか、カナダやメキシコの一部に生息していた。順応性の高い動物でほぼ何でもエサにする。靴の革や果物さえ食べ、20世紀末にはアメリカのほぼ全域に拡大、ニューヨーク市でも目撃されている。

「しぶとく生き延びる動物の一つだ。ゴキブリやアライグマ、ウサギのようにね」とボザース氏は語る。

 同氏のチームはバージニア州北部でコヨーテの糞を採集し、DNAを抽出。アメリカ北東部に生息するイヌ科イヌ属の各動物のDNAと比較した。

 その結果、バージニア州のコヨーテと五大湖周辺のオオカミとの雑種が確認された。ただし、アメリカ南部の数カ所で孤立する絶滅危惧種、アメリカアカオオカミとは関わりがなかった。

「アメリカアカオオカミにとっては朗報だ。種の遺伝的多様性を低下させる同系交配の影響で、既に存続が脅かされていた」とボザース氏は説明する。

◆オオカミとの雑種、シカを捕食?

 確認された雑種がどの程度オオカミに近いのかは、今のところ断定できないという。「ある時点で交雑したとしか言えない。何世代か前の可能性もある」。

 行動に関する研究はこれからだが、大型の野生動物の捕食など、生態系に悪影響を与える可能性を調べる必要がある。

 東海岸で確認された他の雑種は、生存中の外見や遺骨から判断して、今回よりもかなり大型だった。頭蓋骨、顎、歯がオオカミに近いという。

「中部の小型コヨーテは戦闘的で狡猾だが、1匹ではシカを引き倒せない。雑種ならば可能かもしれない」とボザース氏は話す。

 ニューヨーク州オールバニにあるニューヨーク州立博物館の哺乳類担当学芸員ローランド・ケイズ(Roland Kays)氏は、「コヨーテの雑種が東部の森林に適応している事実が浮き彫りになった」とコメントしている。

 今回の研究は「Journal of Mammalogy」誌10月17日号で発表された。

Photograph by Elijah Goodwin, Whimbrel Nature Photography

文=Christine Dell'Amore