2007年、祭りを控えたバングラデシュの首都ダッカで駅を出る超満員の列車。

Photograph by Rafiqur Rahman, Reuters
 国連人口基金が10月26日に発表した「世界人口白書2011」によると、世界人口は10月31日に70億人を(少なくとも象徴的には)突破する見通しだという。 しかし、なぜ10月31日なのか。そして、なぜ70億人突破の予定日が調査機関によって異なるのか。例えば、アメリカ国勢調査局も世界人口の予測を行っているが、こちらは70億人の大台突破を2012年3月12日と見積もっている。

 70億人突破の時期を予測するのは、理屈の上では簡単なことだ。最新の国勢調査データから各国の最新人口を取得し、それを基準として、すでに死亡した人、これから出生する人、および移住によって変化する人口の推定数を加減すればいい。

 しかしもちろん、実際はそれほど単純ではない。

 例えば「政府が正確な統計システムを持たない国もあり、(国勢調査の)データが不完全な場合もある」と、世界人口白書の編集主任者を務める国連のリチャード・コロッジ(Richard Kollodge)氏は話す。

 また場合によっては、その国の正式な国勢調査データには反映されない傾向も考慮に入れなければならない。

 例えば、一人っ子政策により、中国では男児偏重主義から多くの親が女児の誕生を報告していないと、ニューヨークに本拠を置く非営利団体「ポピュレーション・カウンシル(Population Council)」のバイスプレジデントを務めるジョン・ボンガーツ(John Bongaarts)氏は言う。「多数の女児が国勢調査から漏れていることはわかっている。学校で女児の数を数えると、6年前の出生数より多いからだ」。

◆「70億人」には単なる推測以上の根拠

 国連人口部では、これら複雑な要素をすべて考慮に入れて数字を導き出そうとしている。「これは知識に基づく推測などという単純なものではない。あらゆる要素を非常に綿密に考慮しているからだ」と国連のコロッジ氏は言う。

 アメリカ国勢調査局も、ほぼ同様のやり方で人口分析を行っている。同局の人口部に所属する人口統計学者、ダニエル・グッドカインド(Daniel Goodkind)氏によると、70億人の突破予定日が2011年10月31日または2012年3月12日と2つの機関で異なっている理由の一端に、推計するタイミングの問題があるという。

「国連では、各国の推計人口と将来推計人口を2年ごとに改訂している。一方、われわれアメリカ国勢調査局はより流動的な手法をとっており、たいていは年に2度、入手可能なデータを基に、大部分の国の推計人口を出している。われわれの推計が国連のものと一致しないことがあるのは、そのためだ」とグッドカインド氏は述べている。

◆象徴的な数字で人口問題に光を

 綿密な計算によって割り出したにもかかわらず、両機関とも、大台突破の予定日はあくまで象徴的なものであることを明確にしている。

 両機関とも、70億人突破予定はこの日であると特定の日付を打ち出すのではなく、何日から何日の間と幅をもたせて発表することもできたはずだ。しかしそうしなかったのは、彼らの賢明な策によるものだと、バージニア州にあるジョージ・メイソン大学の政策専門家ジャック・ゴールドストーン(Jack Goldstone)氏は話す。

「(特定の日付を打ち出したのは)非常にいいアイデアだった。世界人口の増加は誰もが考えなければならないのに、誰もが無視している問題だからだ。特定の日付、特定の切りのいい数字を打ち出すことで、国連はこの問題に近年で最も大きな注目を集めることに成功した」とゴールドストーン氏は述べている。

◆「本当の問題」は70億人突破のタイミングではない?

 ポピュレーション・カウンシルのボンガーツ氏は次のように述べている。「人口が69億5000万人なのか70億5000万人なのか、そこを懸念するのはやや的外れだ。この発表の真のメッセージは、世界の人口は巨大であり、われわれはその影響に目を向けなければならないということだ」。

 国連のコロッジ氏も同様の意見を述べている。「(今回のことは)人類の大きな課題の解決に向け、今すぐ行動を起こすきっかけとすべきだ。まだそのチャンスがあるうちに。ひとつの大きな数字にのみ目を向けては、世界中の普通の人々が抱える、より切実な問題が見えてこない」。

Photograph by Rafiqur Rahman, Reuters

文=Ker Than