怪物クラーケン、先史時代の海に実在?

2011.10.11
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ネバダ州で発掘された脊椎化石。この整然と並んだ様子から「怪物説」が生まれた。

Photograph courtesy Mark McMenamin
 先史時代の海の墓場から、巨大な魚竜の骨が奇妙に整列した状態で見つかった。ある古生物学者が、この化石は、巨大なイカのような姿をした怪物クラーケンが実在した証拠だとする説を唱えている。バスほどもあるこの大きな海生動物を、クラーケンが捕食していたというのだ。 他の研究者たちは、クラーケンなど持ち出さなくとも、この化石には容易に説明がつくと反論している。クラーケンは、何世紀も前の巨大なイカかタコの目撃談が基になったとみられる伝説上の海の怪物だ。

 問題の化石は、ラスベガスの北西約560キロ、ネバダ州にあるバーリン・イクチオサウルス州立公園で見つかった。約2億年前の骨が堆積した当時は海底だったところだ。

 化石は円形をした脊椎骨、すなわち背骨の部分で、恐竜時代の海生爬虫類である魚竜目(イクチオサウルス類)の1種、ショニサウルス・ポピュラリス(Shonisaurus popularis)のものだ。

 骨の大きさから、イクチオサウルスの体長は15メートルかそれ以上に達したと推測される。

◆クラーケンの自画像?

 マサチューセッツ州にあるマウント・ホリヨーク大学の古生物学者マーク・マクメナミン(Mark McMenamin)氏は先ごろ、この化石採集場を家族で訪れた際、一部の脊椎化石が整然と2列に並んでいるように見えることに気づいた。

 きれいな配列を目にしたマクメナミン氏の頭に、骨がそのように並んだ理由を説明する驚くべき仮説がひらめいた。

 その仮説とは、巨大なイカかタコのような生物がイクチオサウルスを捕食した後、その骨を、自らの腕に並ぶ吸盤に似せて2列に並べたというものだ。

「巨大クラーケンの巣を発見」と題し、マクメナミン氏の仮説について発表したプレスリリースによると、「州立公園で見つかった脊椎骨の“敷石”状の配列は、これまでに確認された最も古い自画像かもしれない」という。

「これらの骨はクラーケンが捕らえてゴミ捨て場に持っていき、そこでバラバラにしたと考えられる」とマクメナミン氏はプレスリリースの中で述べている。マクメナミン氏には10月11日に取材を申し込んだが、回答を得られなかった。

 マクメナミン氏によると、クラーケンは「(イクチオサウルスを)溺死させるか、あるいは首の骨を折っていた」という。

◆整列した化石の謎にクラーケンは不要?

 ミネソタ大学モリス校の進化生物学者、ポール・“P.Z.”・マイヤーズ氏(Paul "P.Z." Myers)は、マクメナミン氏の仮説は「奇抜で超自然的な話」であり、マクメナミン氏が挙げている証拠は「恐ろしく状況的」だと述べている。

 化石が整然と並んでいるのは「驚くことではない」とマイヤーズ氏は言う。「芸術家肌のタコの仮説を持ち出すまでもない」。

 マイヤーズ氏によれば、イクチオサウルスが死んで体が腐敗すると、誰もが想像するように、背骨を構成していた脊椎骨はバラバラになるという。

 これらの骨は「縦長に並んでいるため、いずれか一方へ倒れかかって、たまたま2本の平行な列になることがあり」、それが化石として保存されたのだとマイヤーズ氏は言う。

◆クラーケン説は「愉快なアイデア」

 カリフォルニア大学デービス校に所属する古脊椎動物学者、藻谷亮介氏もバーリン・イクチオサウルス州立公園で調査を行ったが、やはりマクメナミン氏の説には懐疑的だ。「想像するには楽しいが、事実とはとても信じがたい」と藻谷氏は言う。

 骨が整然と並んでいた理由について、藻谷氏は別の仮説を提示した。「これらの骨は円形をしているため、腐敗して関節のところで分離すると、海底に円の部分を上にして横たわり、それが海流によって1カ所に寄せ集められることが考えられる」と藻谷氏は言う。

「この(マクメナミン氏が仮説で取り上げた)標本は2列になっているが、私は3列のものも見たことがある。(中略)骨がこのように並ぶのは自然なことだ」。

 マクメナミン氏の仮説は、ミネソタ州で開催中のアメリカ地質学会(GSA)会議で発表された。

Photograph courtesy Mark McMenamin

文=Ker Than

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