アメリカでアルマジロが生息域を拡大

2011.10.11
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何かに驚いて飛び上がるアルマジロ。アメリカ、フロリダ州の研究所で撮影。

Photograph by Bianca Lavies, National Geographic
 いまアメリカでは中西部から東部にかけて野生アルマジロが生息域を拡大している。気候条件が適さないと考えられてきた地域でも目撃例が寄せられているという。 アルマジロはアメリカ大陸が原産で現在20種が知られている。分布域が中南米以外にまで及ぶのは「ココノオビアルマジロ」1種のみ。1880年代にはアメリカのテキサス州で確認されており、それ以降も生息域を拡大し続けてきた。

 ここ数年では、サウスカロライナ州からイリノイ州にまたがる地域に定着しているほか、インディアナ州やアイオワ州でも目撃例が報告されている。

 この状況を受けて一部の専門家は、野生のココノオビアルマジロがワシントンD.C.やニュージャージー州まで進出するのも時間の問題ではないかと話す。生息域拡大の要因については、気候変動に伴う気温上昇を指摘する意見がある。

 しかし、アメリカ、ジョージア州のバルドスタ州立大学でアルマジロの生態を研究している生物学者コリーン・マクドナウ(Colleen McDonough)氏は、その見解に否定的だ。マクドナウ氏によると、ココノオビアルマジロは19世紀後半以降、アメリカとメキシコの国境を流れるリオ・グランデ川から北や東の方角へと絶えず生息域を拡大してきた。

「要因についてはさまざまな仮説がある。アメリカにおける土地利用の慣行や天敵となる大型哺乳類の不在などだ。しかし長期に渡って続いてきたことを考えれば、最近の気候変動を直接の要因とするのは無理がある」。

◆アルマジロは適応能力が高い

 マクドナウ氏が着目するのは、アルマジロが持つ高い適応能力と旺盛な繁殖力だ。雑食性で、森林や草地のみならず、郊外の住宅地にも巣を作る。メスは生後わずか1年で生殖能力を持ち、年に1度、4匹の子どもを生む。

 もちろん弱点はある。マクドナウ氏によると、腹部の体毛がまばらなため、寒さにはそれほど強くないという。背部を覆っている硬い「鱗甲板」も外敵から身を守る上では有効だが、防寒の機能は果たさない。そのためアルマジロの生息域は、極端に寒冷な地帯にまでは拡大しないと見られている。また、冬眠しないので一年中エサを探し回らなければならない。

 ただし、短期間であれば、エサがなくても巣穴の中で寒さをやり過ごすことはできるとマクドナウ氏は言う。「うっすらと雪が積もる落ち葉の中でエサを探していた、というテキサス州北部の目撃談を聞いた。より北の地域でも同様の行動は可能だと思うが、冷え込みの厳しい日が長期間続いた場合は難しくなるだろう」。

◆アルマジロの侵入が生態系にもたらす影響

 多くの侵入種と同様、アルマジロも新たな生息地に何らかの影響を与える可能性があり、その結果は簡単には予測できない。

 アルマジロは土の中から昆虫の幼虫を掘り出して食べるが、スカンクなど同様の習性を持つ在来種もいるため、エサの争奪が激化するかもしれない。また、さまざまな生物の巣を襲う習性もあるため、ウズラなど地上に営巣する鳥は生息数が減少する可能性もある。

 アルマジロの繁殖を抑制しようと思っても、一筋縄ではいかない。マクドナウ氏によると捕獲が難しい上、新たな生息地には天敵の動物がほとんどいないという。ただし、ヒアリなどの害虫を食べてくれるなど、人間にとって有益な側面もある。

 アルマジロの生息域は果たしてどこまで拡大するのだろうか。マクドナウ氏も見当がつかないと述べる。「専門家たちは過去数十年に渡って、平均気温を基準に生息可能な限界域を推測してきた。しかし、アルマジロの力は底が知れない。もうお手上げ状態だ」。

Photograph by Bianca Lavies, National Geographic

文=Brian Handwerk

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