NASAの探査機が接近撮影した画像から、ハートレー第2彗星(103P/Hartley 2)の周囲には氷の粒が舞っているのがわかる。

Image courtesy NASA/JPL-Caltech/UMD
 地球上の水と化学的に近い水が彗星上に存在することが、初めて確認された。古代の地球の海の形成に、大量の水を伴って衝突した彗星が寄与したという説を裏づける発見だ。 惑星の形成モデルからすると、原初の地球は熱すぎて、表面に液体の水を保持することはできなかったと考えられる。このことが、地球の海の起源に謎を投げかけている。 そこで、地表の水は、地球が冷えた後に衝突した彗星に由来するのではないかという説が生まれた。

 しかし1980年代に、彗星の水に含まれる通常の水分子と「半重水」分子の比率が測定され、この説は大きな打撃を受けた。

 半重水の分子は、水分子の片方の水素(H)が重水素(D)という重い同位体で置き換わったものだ。通常の水と半重水の比率から、水素に対する重水素の比率(D/H比)がわかる。天然の水はすべて決まったD/H比を持っている。重水素は非常に安定した原子であるため、この比率は永久に変わらない。

 1980年代に太陽系内のいくつかの彗星を調査してわかったのは、これらの彗星の水のD/H比が地球上の水とは大きく異なるということだった。

 ドイツ、マックス・プランク太陽系研究所の天文学者で、今回の研究を率いたパウル・ハルトフ(Paul Hartogh)氏によれば、過去の調査結果は、地球の水で彗星に由来するものはせいぜい10%程度であることを示唆するもので、残りはおそらく水の豊富な小惑星がもたらしたと考えられてきた。

◆カイパーベルト彗星で地球に近い水

 今回発表された研究では、ハルトフ氏の調査チームは欧州宇宙機関(ESA)のハーシェル宇宙望遠鏡を使い、ハートレー第2彗星(103P/Hartley 2)のD/H比を調査した。その結果は、ハートレー第2彗星の水が地球の水に非常に近いことを示していた。

 ハートレー第2彗星はいわゆる木星族の彗星だ。彗星の軌道が木星の軌道近くまで達するため、このように呼ばれる。

 重要なのは、コンピューター・シミュレーションから、ハートレー第2彗星の起源がカイパーベルトにあると推定されていることだ。カイパーベルトというのは海王星軌道の外側の領域で、彗星など、太陽系の形成で残った冷たい小天体が集まっている。

 ここから、地球の海の形成に寄与した彗星の大半は、カイパーベルトに起源を持つものだったと考えることもできる。

 これに対して、地球とは異なるD/H比を示した水を持つ彗星は、オールトの雲に起源を持つものだと考えられている。オールトの雲は、カイパーベルトのさらに外側にあると想定されている領域で、ここには彗星の元となる天体が億の単位で存在するとされる。

◆水を持つ小惑星も起源の1つ?

 地球に近い水を持つ彗星が1つ見つかったことで、ほかにももっと同じような彗星があるのではないかと想像できる。つまり、地球の水の多くが結局は彗星に由来する可能性があるということだとハルトフ氏は言う。

 しかし正確にどの程度の水が彗星由来かは、現段階ではわからない。さらに研究が必要だ。

「具体的な数字を挙げることはできない。原理的には、地球の水がすべて彗星由来である可能性もある。しかし多くが小惑星に由来する可能性、あるいはそれが一番多い可能性も、やはりある」とハルトフ氏は話している。

 彗星の水についての研究論文は、「Nature」誌オンライン版に10月5日付けで掲載された。

Image courtesy NASA/JPL-Caltech/UMD

文=Ker Than