新種のラプトル、鉤ツメは捕食用?

2011.09.22
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アメリカのユタ州で発見された新種ラプトル類「タロス・サンプソニ(Talos sampsoni)」の想像図。

Illustration courtesy Jorge Gonzales, Utah Museum of Natural History
 アメリカのユタ州で非常に希少な新種恐竜の化石が発見された。細長い体で俊敏に二足歩行する肉食恐竜「ラプトル類」の一種で、およそ7600万年前に生息していたと考えられる。巨大な鉤ツメのついた足の指は一度完全に折れていたという。 全長約2メートルの「タロス・サンプソニ(Talos sampsoni)」は、多雨で温室のような白亜紀後期の北アメリカに住んでいた。当時の北アメリカは浅い内陸水路によって、西の「ララミディア」と東の「アパラチア」という2大陸に分断されていたと考えられている。

 研究チームのリーダーでイリノイ州シカゴにあるフィールド自然史博物館の古脊椎動物学者リンジー・ツァーノ氏は、「タロス・サンプソニは、鳥に似た小型の捕食恐竜、獣脚類トロオドン科に属し、北アメリカでの発見例は非常に珍しい」と話す。

 2008年、研究チームがユタ州でカメの化石を探していたときに、北アメリカで最上級のラプトルに出くわしたのだという。「思いがけない発見でびっくりした。研究者ならだれでも興奮すると思う」。

 学名は、翼を持ち稲妻のような速さで走ったといわれるギリシャ神話の登場人物「タロス」と、ユタ大学自然史博物館の古生物学者スコット・サンプソン氏にちなんでいる。

◆ラプトル類の鉤ツメはエサを刺す道具?

「最注目点は、後肢の第2趾(だいにし、人差し指に相当)だ。トロオドン科に特徴的な鉤ツメが発達し、その巨大な鎌の役割に関して論争が続いてきた」とツァーノ氏は述べる。

 例えば、高所に登る際に使った、敵と戦い獲物にとどめを刺す武器、または羽づくろいをする道具など、諸説が登場している。

 タロスの第2趾には骨折した跡があり、CTスキャナーで分析したところ、外部から加えられた力、おそらくはほかの動物にかみつかれた際に折れたものと判明した。

 ツァーノ氏は、「鉤ツメを歩行にも使っていたなら、外傷を受けた足を引きずっていたはずだ。その場合、骨は変形を余儀なくされるだろう」と述べる。「しかし、足の骨に骨折以外の異常はなかった」。

 つまり巨大な第2趾は、移動する際に宙に浮いていたという説が有力になる。鉤ツメのないラプトル類も同様の歩き方をしていたことがわかっている。

「鉤ツメは、獲物に突き刺して捕らえるために使っていたと考えられる。例えば、自分より大きな動物の背中をはい登るときに、足掛かりを得ることができただろう。あるいは、現代の鳥と同じように、ライバルと戦う武器として使ったのかもしれない」とツァーノ氏は語る。「いずれにせよタロスは、恐竜の生態研究にとって極めて特別な資料となった」。

◆新種恐竜は雑食だった?

 アメリカにあるメリーランド大学カレッジパーク校の古脊椎動物学者トーマス・R・ホルツ・ジュニア氏は、今回の研究を受けて次のように話す。「鉤ツメは武器と考えるのが妥当だろう。羽づくろいで折れるとは思えないからね」。

 ホルツ氏は、「小さな動物を刺して押さえつける、または大きな獲物に切りかかる道具だった」と判断している。

「ケガの後でも生き続けたということは、雑食性だったとも考えられる。鉤ツメが狩りに使えなくなった後、おそらくは植物などを食べて傷が癒えるまで命をつなげたのだろう」。

 同氏の研究チームは以前に、「トロオドン科の恐竜の歯は、肉食爬虫類よりも草食爬虫類に似ている」と発表している。

 今回の発掘を率いたツァーノ氏は、「いろいろと想像が膨らむのは致し方ない。しかし、“武器説”を支持する証拠が増えれば、説得力も増すはずだ」と述べている。

 今回の研究成果は、オンラインジャーナル「PLoS ONE」に9月19日付けで掲載された。

Illustration courtesy Jorge Gonzales, Utah Museum of Natural History

文=Christine Dell'Amore

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