古代ザメ最古の“成育場”は淡水湖

2011.09.09
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岩石から見つかったサメの卵嚢の化石(左と中央)。右は復元図。

Diagram courtesy Jan Fischer
 捕食者のサメも、小さいうちは安全な隠れ場が必要だ。新たに見つかったサメの“成育場”は、これまで確認された中では最古のものだという。 新たな研究によると、キルギス南西部にある化石発掘現場から見つかった約2億3000万年前のサメの歯と卵嚢(らんのう)の化石は、当時サメの幼魚が浅い湖にたくさん集められていた可能性を示しているという。

「ヒボドンティド(hybodontid)」というこのサメは、現代のコモリザメのように水域の底部に生息していたとみられる。

 母ザメは、トクサなど湖岸の湿地に生える植物に卵を産みつけたとみられる。孵化した子どもたちは、おそらく小型の無脊椎動物を好きなだけ食べることができ、また、生い茂った植物によって捕食者から守られていた。

 しかし、そこに子育てをする母親の痕跡はない。研究を指揮したヤン・フィッシャー(Jan Fischer)氏によると、幼魚は自力で成長していた可能性が高いという。フィッシャー氏はドイツ、フライベルク工科大学地質学研究所の古生物学者だ。

 フロリダ自然史博物館の生物学者、カタリナ・ピミエント(Catalina Pimiento)氏が電子メールでの取材に答えたところによると、一般に「サメの生存のカギを握る場所であることから、サメの幼魚の成育場は非常に重要だ」という。

「今回の研究によって、サメが子どもを守るために成育場を利用していた(ことが確認された)期間が、従来考えられていたより長いことがわかった。このことは、成育場の存在がそれだけ重要であることを裏付けている」。なお、ピミエント氏は今回の研究には参加していない。

◆古代のサメは淡水に生息?

 最初にサメの卵嚢の化石を採掘場から発見したとき、フィッシャー氏の研究チームは、幼魚の生え替わった歯も埋まっているはずだと考えた。

 そこで堆積物の試料をいくつか採取し、それをドイツに持ち帰って研究室で調べた。すると、約60本の歯が見つかり、うち1本だけは成体のものだったが、それ以外はすべて幼魚の歯だった。

 幼魚の歯が多数を占め、また、それらの歯が淡水の化学的特徴を示したことから、古代のサメは、海洋から遠く離れた淡水域で産卵していた可能性が考えられる。

 そればかりか、古代のサメは生涯を湖や河川で過ごしていたのではないかとフィッシャー氏は考えている。これに対し、現代の卵生のサメは一生を海洋で過ごす。

 成体のサメが産卵のため、現代のサケのように、海から成育場まで長距離を移動していた可能性もある。しかしフィッシャー氏によると、非常な長距離を泳がなければならないことなどから、これは「考えにくい」という。

◆希少なサメの化石

 その答えはともかく、古代ザメの新事実が化石から判明することはめったにないと研究チームは述べている。サメの骨格は軟骨でできているためすぐに腐敗し、その生態を知る手がかりはわずかしか残らない。

 ノースカロライナ州にあるアパラチアン州立大学の古脊椎動物学者で、今回の研究には参加していないアンドリュー・ヘッカート(Andrew Heckert)氏は次のように述べている。

「今回の研究が特にすばらしいのは、サメの歯と卵嚢の化石があわせて見つかった点だ。通常は、生痕化石(皮膚の印象化石など)と生物本体の化石のいずれかしか見つからず、それが(どの仮説を)裏付けるものかをめぐって、いつでも論争が起こる」。

 すなわち、多くの場合、どちらか1種類の化石を発見しただけでは、古代の生物の生態について最終的な結論を下すことはできないわけだ。「今回見つかった卵嚢の化石は見事なものだ」とヘッカート氏は述べている。

 今回の研究は、「Journal of Vertebrate Paleontology」誌の9月号に発表された。

Diagram courtesy Jan Fischer

文=Traci Watson

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