セディバ猿人、現生人類の祖先の可能性

2011.09.08
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南アフリカの発掘地点付近に置かれたアウストラロピテクス・セディバの少年の頭蓋骨。

Photograph by Brent Stirton, National Geographic
 200万年前の霊長類の骨格と皮膚を分析した結果、道具を使用していた可能性が明らかになった。 この人類の祖先は2008年に南アフリカ共和国のマラパ地方で発見され、アウストラロピテクス・セディバ(Australopithecus sediba、セディバ猿人)と名付けられた。昨年4月には初めての論文が発表されている。

 新たな5つの研究により、現生人類と猿人の特徴を併せ持つ珍しい化石がより詳細に分析され、人類進化におけるセディバ猿人の位置付けが明確になった。

 例えば、骨格の分析からは、道具を作って使用していた可能性が浮上した。また、皮膚の化石も含まれている可能性があるという。実証されれば、初期の人類の祖先から得られた初めての軟組織となる。

 研究責任者でヨハネスバーグにあるウィットウォータースランド大学の人類学者リー・ベルガー氏は、「皮膚かどうかを確かめるため、“マラパ軟組織プロジェクト”という公開研究を開始して、科学界全体に協力を求めている」と話す。

◆進化の過渡期を示す化石

 セディバの骨格は10代前半の少年と30歳前後の女性だった。2人は数時間か数日以内に相次いで死亡したと見られ、血縁関係の可能性もある。

 2人は地面の裂け目から転落し、地下の洞穴で死んだようだ。周囲には動物の骨も散乱していた。この“死の落とし穴”にはやがて石の粒子が固まった角礫岩(かくれきがん)が堆積したため、骨が保存されやすい状態だった。

 セディバは猿人と現生人類の特徴を兼ね備えていたことが既にわかっており、新研究もその成果を土台としている。

 例えば、成人女性の骨盤の一部と右足からは、直立歩行が可能だったことがうかがえる。足首は現生人類にかなり似ているが、かかとは細くて猿人に近い。

 珍しい足の特徴から、身長1.2メートルのセディバは主に樹上で生活し、現生人類のように直立歩行も可能だったらしい。

◆物を巧みにつかめる手

 セディバの手と脳を分析したところ、石の道具を作って使用する能力も示唆されている。研究チームは高性能X線スキャン装置で少年の頭蓋のエンドキャスト(仮想的な鋳型)を作成した。

 脳の全体的な形や構造は現生人類に似ているが、サイズが驚くほど小さい。現生人類のわずか4分の1で、チンパンジーよりやや大きい程度だった。

 アメリカ、ジョージ・ワシントン大学の人類学者ブライアン・リッチモンド氏は今回の研究には関与していないが、「我々の祖先の脳は劇的な大型化の前に、現生人類に近い構造へと変化を始めた。研究結果はこの仮説を裏付けている」と述べた。

 セディバの道具作成能力は、女性の右手骨格の分析でも裏付けられた。この手は初期の「ヒト族」の化石としては最も完全だという。ヒト族は、人類の祖先とそれらの進化上の近縁種を指す。

 セディバの親指は他の指とのバランスから見ても長く、物をつかむ能力が人類に極めて近いと考えられる。石器の製作には欠かせない能力だ。

 正確につかむためには、手のひらではなく指の役割が重要になる。他の霊長類にも同様の能力はあるが、人類はつかんで力を加え、その力を使って細かい作業を行える点に特徴がある。

 研究責任者によるとセディバのつかむ能力はかなり正確で、長い親指を備えた手は現生人類よりも機敏に動いた可能性もある。「ある部分では人類を超えていたようだ」とリッチモンド氏は話している。

 セディバ猿人に関する5つの論文は「Science」誌9月9日号に掲載されている。

Photograph by Brent Stirton, National Geographic

文=Ker Than

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