3・11地震の振動、電離層まで到達

2011.08.04
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太平洋を横断した津波の波の高さを予測したコンピューターモデル。

Diagram courtesy NOAA
 3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震の振動は、大気圏外まで到達しかねない強さだったということが、最新の研究で明らかになった。 揺れる大地の上下動と押し寄せる津波によって生じた振動は、上空に横たわる大気を上へと押し上げていたと、アメリカ、イリノイ州にあるノースウェスタン大学の地球物理学教授エミール・オカル氏は言う。オカル氏は今回の研究チームには参加していない。

 このような影響はこれまでの地震でも確認されていたが、今回の日本の地震で生じた振動は観測史上最大の規模だった。

 この振動は低周波数の音波に似ており、地上ではごく小さく、せいぜいその振動の元となった上下動と同じくらいの規模でしかない。ところがこの振動が大気の薄い上空へ伝わっていくと、その波は大きくなるとオカル氏は話す。

 今回の地震から生じた波動が飛行機の巡航高度(9100メートルくらい)まで到達したときには、振幅が1メートル程度まで拡大していた可能性があるとオカル氏は言う。振動は通常の均衡状態からこの程度までは増幅するもので、この程度では航空機の乗客は揺れを感じることすらない。

 だがさらに上空の電離層では、この波動は元の規模の数千倍まで増幅されていたと、台湾国立中央大学宇宙科学研究所の劉正彦(Liu Jann-Yenq)教授らの研究チームは言う。

◆地震の波動を利用して津波を監視できる?

 電離層は比較的高温のガスでできている。高度が高いため、強烈な太陽光の影響を受けて、ガスは電荷を帯びている。

 上へと伝わってきた地震の波動がこのガスを圧縮し、その影響はGPSに使われる電波などにも現れるほどだった。

「もし、きわめて正確なGPS装置を持っていれば、(信号の乱れを)確認できる」とオカル氏は言う。

 こうしたGPS信号の乱れを利用して、津波が外洋にあるうちから追跡しようと提唱している研究者もいる、とオカル氏は言い添える。

 だがオカル氏は、それが警告システムとして実用性を持つとは考えにくいとしている。信号の変化を確認できるほど正確なGPS受信機は陸上にしかないので、信号の乱れを捉えられた時には、津波はもう海岸に到達している、というのがその理由だ。

 オカル氏によると、電波が電離層で反射するのを利用して水平線以遠を観測するOTHレーダー(over-the-horizon radar)にも同様の影響が現れ、こちらのほうが利用できる見込みが高い。

「津波の警告システムを改善できる可能性があるとして、これに取り組んでいる研究者もいる」とオカル氏は言う。  今回の研究は「Journal of Geophysical Research」誌6月28日号に掲載された。

Diagram courtesy NOAA

文=Richard A. Lovett

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