吸血コウモリに血管を感知するセンサー

2011.08.02
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ナミチスイコウモリの顔には体温を感知できる特殊な細胞がある(資料写真)。

Photograph by Bruce Dale, National Geographic
 血の気が引く話かもしれないが、吸血コウモリ(ナミチスイコウモリ)には血管の熱を感知できる特別に進化した神経細胞があるという。 夜行性のヘビは赤外線を感知するピット器官を備えており、獲物の気配を察知している。ナミチスイコウモリの顔にもこれに似た器官があり、好物の血が流れる血管を見つけている。だが、かみつく具体的な場所をどのように特定しているのかは解明されていなかった。

 新たな研究から、摂氏32度以上の体温を感知できる特殊な顔面神経が発達している事実がわかった。

 共同研究者でアメリカ、メリーランド州ボルティモアにあるカーネギー研究所のゲノム学者ニコラス・インゴリア(Nicholas Ingolia)氏は、「ナミチスイコウモリは独特のライフスタイルに合わせて風変わりな方法をいろいろ取り入れた。その一例だ」と話す。

 人間にも同様の機能はあるが、熱いストーブに触るなど、痛みを感じる刺激を受けないと働かない。ナミチスイコウモリには2つの熱感知機能がある。1つは刺激的な熱を感知し、もう1つで獲物の血管に狙いを定めている。

 同様の機能は3種のヘビでも確認されていたが、最低でも2日に1度は血液を摂取しなければ生きていけないナミチスイコウモリにとっては特に不可欠だ。

「この血管感知機能は極端に発達している」とインゴリア氏は言う。他のコウモリにもこの鋭敏な機能の遺伝子はあるが、活性化しているのはナミチスイコウモリだけだという。

 インゴリア氏のチームでは、ナミチスイコウモリの顔のピット器官に伸びている神経細胞を取り出し、体の他の部分へ向かう知覚神経細胞と比較した。

 ピット器官の神経細胞は、通常の痛みを感じる神経細胞とは解剖学的に異なっていた。つまり、血管を感知する細胞は独自の情報を運んでいることになる。

 また、遺伝子を調べたところ、同じ熱感知遺伝子は体全体に存在することがわかった。しかし、ピット器官ではその遺伝子から特殊な神経細胞が形成されていた。

 さらに、ナミチスイコウモリと他の哺乳類との関係も明らかになった。外見はネズミのようだが、遺伝子的にはウシやウマに驚くほど似ているという。動きを見たことがある人なら、ウマとの関係にも驚かないかもしれない。

 アメリカ大陸の熱帯地方、暗闇の中で狩りをするナミチスイコウモリは、地面の上をウマのようにギャロップし、四つんばいで獲物に接近する。そして、かみそりのように鋭い歯で獲物の血管を切り裂き、流れ出る血液を舌で舐めるのだ。

 今回の研究は「Nature」誌8月4日号に掲載されている。

Photograph by Bruce Dale, National Geographic

文=Christine Dell'Amore

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