アメリカ西部で相次ぐカエルの奇形

2011.08.02
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寄生虫感染で肢が変形したアマガエル(学名:Pseudacris regilla)。2010年撮影。

Photograph courtesy Dave Herasimtschuk, Freshwaters Illustrated
 アメリカ西部で、両生類の奇形を引き起こす寄生虫の蔓延が続く実態が明らかになった。 四肢の発達段階にある数種のカエルが扁形寄生虫(学名:Ribeiroia ondatrae)に感染すると、肢が生えなかったり、複数の肢が不自然な角度で飛び出すなど、体に異常が発生する。奇形のカエルは動作に障害を余儀なくされ、そのまま命を落とすか、すぐに捕食動物の餌食となる場合が多い。

 奇形の原因は以前から知られていたが、最後に調査を実施した1999年以降、西部4州の寄生虫の活動場所が変化しているようだ。

 コロラド大学ボルダー校の生態学者ピーター・ジョンソン氏らは2010年、カリフォルニア、オレゴン、ワシントン、モンタナの4州48カ所の湿地で、カエルと寄生虫に関するデータを収集した。

 その結果、調査地域の両生類に寄生虫感染が今なお蔓延している実態が明らかになった。さらに、「寄生虫が新たに広がった31%、消失した27%と、湿地全体における分布は変化していた。しかし、生息数はほとんど同じだ」とジョンソン氏は調査結果を説明する。

「最大の違いは、過去10年の寄生虫の中心的な活動場所だ」。例えば1999年の時点で異常なカエルがほとんど確認されなかった池でも、今回の調査では30%以上に四肢の奇形が見られた。反面、前回高い感染率を記録した地点では低下が確認されたという。

 絶滅の恐れがある両生類が蔓延地域に生息している可能性もあるため、保護活動では寄生虫の分布範囲の変化を把握する必要がある。

 土地利用など、環境要因を追跡して寄生虫の動きを予測できれば、両生類に今後どのような問題が発生するか特定できるかもしれない。「注目度は高くないが、アメリカ西部の両生類に異変が続いている事実は看過できない」とジョンソン氏は語る。

◆宿主を転々とするカエルの寄生虫

寄生虫のライフサイクルは複雑で、宿主を転々とする。最初に寄生するのは、アメリカ西部の湿地に多く生息する巻貝、ラムズホーンだ。

「ラムズホーンの体内に入ると無性生殖で自身のクローンを作成し、生殖腺をはぎとって“寄生虫マシン”に変えてしまう」とジョンソン氏は説明する。何百もの自由遊泳性の幼虫がこの巻貝から毎晩排出され、次の宿主であるオタマジャクシを極めて正確に見つけ出す。

 幼虫はオタマジャクシの組織に侵入。一部のカエルで、飛び跳ねたり、泳いだりする運動能力が失われてしまう。

「今度は、このカエルを鳥が食べ、寄生虫が最後の宿主へと鞍替えする」。寄生虫は鳥の体内で有性生殖し、卵を含んだ排泄物をラムズホーンが食べるというサイクルだ。

 元々北アメリカに生息している寄生虫が拡散した背景には、人間の活動が大きく関係しているとジョンソン氏は話す。

 例えば、ラムズホーンは藻類をエサにしている。農地や工業地帯から湿地へ流れ込む排水には肥料となる栄養分が含まれるため、藻類の成長が促進される。湿地のラムズホーンが多いほど、寄生虫が感染する最初の宿主も多くなるわけだ。

「寄生虫の増加が問題の根底にある」と同氏は述べる。「カエルに限った話ではないだろう」。

Photograph courtesy Dave Herasimtschuk, Freshwaters Illustrated

文=Christine Dell'Amore

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