地球に初めて見つかったトロヤ群小惑星は、地球の軌道(青色の点線)に対して奇妙に傾いた軌道(緑色の線)を持つ。

Illustration courtesy Paul Wiegert, University of Western Ontario
 地球と重力でゆるやかにつながっている小惑星が、実は地球のトロヤ群小惑星であることがこのほど初めて確認されたという。 トロヤ群小惑星は、別の天体の前方または後方の、重力的に安定した領域に位置する天体だ。そのような位置にあるため、2つの天体は同じ軌道を共有しながらも、決して衝突することはない。

 トロヤ群小惑星は、これまでに木星、海王星、火星の軌道上で見つかっており、土星にはトロヤ衛星のグループがいくつか存在する。

 今回見つかった地球のトロヤ群小惑星は、直径約300メートルで、地球の約8000万キロ前方に位置する。

 「この小惑星は、地球の公転軌道と同じ軌道で太陽の周りを回っており、地球の重力にある程度支配されているが、それ以上に太陽の重力に支配されている」とカナダ、アサバスカ大学の天文学者で、今回の小惑星発見に関わったマーティン・コナーズ(Martin Connors)氏は話す。

 コナーズ氏によると、この奇妙な小惑星の状態は、伸ばした腕の先にオレンジを持った人が観覧車に乗っているようなものだという。オレンジはトロヤ群小惑星、持っている人は地球、観覧車は太陽の周りを回る地球の軌道だ。「オレンジは観覧車の周りを回るが、そのオレンジを伸ばした腕の先に保持しているのは人間だ」とコナーズ氏は説明する。

「トロヤ群小惑星もこれと同じだ。主にそれを動かしているのは太陽の重力だが、地球もいくらか影響を及ぼしている。地球の重力がなかったら、小惑星は軌道を外れてしまうだろう。オレンジを手放したら、地面に落っこちてしまうのと同じように」。

 地球にトロヤ群小惑星が存在することは、以前から予想されていた。しかし、トロヤ群小惑星は比較的小さく、また地球から見て常に太陽の方向に位置することが多いため、まぶしい太陽にさえぎられて発見が難しく、これまで一度も見つかっていなかった。

 さいわい、今回見つかったトロヤ群小惑星は、太陽から十分離れる軌道を持つため、望遠鏡で姿を捉えられる。

 名前を2010 TK7というこの小惑星は、コナーズ氏のチームがNASAの広域赤外線探査衛星WISEの望遠鏡を用いて発見し、さらに、ハワイのマウナケア山に設置されているカナダ・フランス・ハワイ望遠鏡(CFHT)によって発見を確認したものだ。

 そもそも地球とこの小惑星がいつ、どのようにして道連れになったのかは不明だが、コンピューターモデルを用いた計算では、トロヤ群小惑星は今後少なくとも1万年は安定した状態を維持することが予想される。

 地球から比較的近い位置にあるにもかかわらず、2010 TK7は将来、ロボット探査や有人探査を行う対象にはなりにくいという。

 というのも、2010 TK7の軌道は地球の軌道に対して奇妙に傾いているため、地球の軌道平面から上下どちらかに大きく外れた位置に来るからだ。この位置関係だと、2010 TK7に到達するには多くの燃料がかかってしまう。

 しかしコナーズ氏によると、今後、より到達しやすい位置にある地球のトロヤ群小惑星が見つかる可能性もあるという。「木星のトロヤ群小惑星の中には、ほぼ木星の軌道平面上に位置するものもある」とコナーズ氏は述べている。「地球にも似たようなものを発見できれば、少ない燃料で到達できる探査目標として、興味深いチャンスを提供してくれるだろう」。

 地球に初めて見つかったトロヤ群小惑星については、「Nature」誌の7月28日号に掲載されている。

Illustration courtesy Paul Wiegert, University of Western Ontario

文=Ker Than