コウモリを引き寄せる特殊な葉

2011.07.29
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キューバ原産の植物マルクグラビア・エベニア(Marcgravia evenia)。皿型の葉が超音波の反射に重要な役割を果たす。

Photograph courtesy Corinna U. Koch
 コウモリが授粉を媒介するキューバ原産のある植物の葉は、超音波を反射する特殊な形状であることが最近の研究で明らかになった。 鮮やかな色彩で昆虫をおびき寄せ、授粉に利用する植物は多く知られているが、超音波を利用する葉が発見されたのは今回が初めて。コウモリが授粉を媒介する植物は数百種あるが、目的の植物を見つけるいろいろなパターンについても研究が進められている。

 中南米に生息するパラスシタナガコウモリを使った実験では、模造葉で隠したボウル状の物体を効率的に発見できることが判明した。

 その後、研究メンバーの1人であるドイツ、ウルム大学のラルフ・ジーモン氏が、キューバ原産の植物マルクグラビア・エベニア(Marcgravia evenia)の写真を眺めていると、花の上に生えている皿型の葉が目にとまった。ジーモン氏は、この形はコウモリの超音波を反射するに違いないと直感した。

 同じく研究メンバーでイギリス、ブリストル大学に所属するマーク・ホルダレイド(Marc Holdereid)氏は、「このときは、コウモリがマルクグラビア・エベニアの授粉を媒介していることすら知らなかった」と話す。

◆皿型の葉がコウモリの目標物に

 その後、2種類の給餌器で比較実験を行ってコウモリの反応を検証してみた。マルクグラビア・エベニアの皿型の葉を取り付ければ、約半分の時間で給餌器を見つけ出すことが判明。ちなみに一般的な形状の葉では、6%しか短縮されなかった。

 研究チームはさらに、コウモリの発した超音波が反射する様子をシミュレーションし、反射波の強度と方向についても調査。付近を飛ぶコウモリは、ほぼすべての方向、同じ強度で反射波を感知していることがわかった。

 ジーモン氏によると、野生のマルクグラビア・エベニアは個体数が比較的少なく分布もまばらなため、生き残るためには遠くのコウモリも引き寄せる能力が欠かせないという。「コウモリは移動範囲が広いので、遠く離れた場所にも花粉を運ぶことができる」。

◆マルクグラビア・エベニアの葉は効果的な標識

 中南米には、花の内側に超音波を反射する特殊な構造を持つマルクグラビア・ホルトニ(Marcgravia holtonii)も自生している。

 だがホルダレイド氏は、「今回の仕組みはより高度だ」と説明する。「ホルトニが反射する超音波はごく限られた範囲にしか伝播しない。コウモリがすでに花の位置を知っている必要がある。エベニアの場合は、遠くにいるコウモリにも見つけてもらえる」。

 授粉を媒介する動物に音波の反射によって自らの所在を伝える植物は、この2種以外にはほとんど研究されていないという。「全容解明に向けた研究は始まったばかりだ。音波を介して動物とやりとりする植物はもっとあるに違いない」。

 今回の研究結果は、7月29日発行の「Science」誌に掲載されている。

Photograph courtesy Corinna U. Koch

文=Rachel Kaufman

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