鳥に食べられても生き延びるノミガイ

2011.07.20
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日本に生息する小型カタツムリの一種、ノミガイ(資料写真)。

Photograph courtesy Shinichiro Wada
 小型のカタツムリの中には、鳥に食べられても生き延びるものがあることが、最新の研究で判明した。ノミガイと呼ばれる小さな陸貝は、身体機能に全く影響を受けることなく、鳥の体外に排泄されるという。 日本に住む野生のメジロの排泄物を調査したところ、驚くほど多くの数のカタツムリ、特にノミガイの殻が、消化されないままで排出されていることが判明した。2~2.5ミリほどしかないノミガイは、本州南部、四国、九州、沖縄などに分布し、伊豆諸島、小笠原諸島にも数多く生息している。

 東北大学の大学院生、和田慎一郎氏らの研究チームはこれを実験的に検証するため、捕獲したメジロに100匹以上のノミガイを与えた。また、やはりノミガイを捕食することで知られるヒヨドリを捕獲し、ノミガイ55匹をエサとして与えた。

 その結果、両方の鳥について、与えられたノミガイのうちおよそ15%が消化器官を生きたまま通過したことが判明した。中には排泄された直後に子を産んだノミガイも1個体おり、この一風変わった“旅”はその生態には全く影響を与えなかったようだ。

 鳥の消化器官を通過する30分から2時間の間に、カタツムリは鳥の移動に便乗し、知らぬ間に新しいすみかに運ばれる可能性もある。

 今回の研究で、野生のノミガイは1つの大きな遺伝群の一部であることが明らかになった。

 研究チームは、小笠原諸島の母島と父島それぞれのノミガイ集団についてミトコンドリアDNAを調べて集団構造を解析した。父島集団では島内の離れた場所では遺伝的にも距離が生じていたのに対し、母島ではその傾向が小さく、島内で遺伝子の流動が頻繁に起き、集団の長距離分散が生じている可能性が示された。父島ではこれまで鳥の排泄物からノミガイなどの殻が見つかっていないことから、母島では鳥が食べて運んだことによってノミガイの長距離分散が進んだと考えられる。

 しかしながら、こうした形での移動には限界があると研究チームは見ている。鳥の消化にはそれほど時間がかからないことから、「群島の域内を超えてカタツムリが長距離移動することは難しいだろうと考えている」と、和田氏は電子メールで答えている。

 残る謎は、これらのカタツムリが捕食された後も生き延びるプロセスだ。小型なために殻が割れずに済んでいるのかもしれないが、消化過程はどんな生き物にとっても決して楽に乗り切れるものではないはずだ。

 和田氏は、研究対象になったノミガイが、多くの陸生カタツムリ同様、冬蓋(とうがい)と呼ばれる膜状の隔壁で殻の口を閉ざすことができる点を指摘する。「これが大きな生き残り要因なのかもしれない。殻の小さな開口部を冬蓋でふさげば、消化液の流入を防げるとみられるからだ」。

 今回の研究結果は「Journal of Biogeography」誌2011年6月21号に掲載されている。

Photograph courtesy Shinichiro Wada

文=Rachel Kaufman

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