雲にできた巨大な穴、原因は潜熱

2011.06.30
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
2009年12月、南極大陸上空で撮影されたホールパンチ雲。

Photograph courtesy Eric Zrubek and Michael Carmody
 航空機が通過した後に雲にぽっかりと開く穴は、わずかな熱によって巨大化した可能性がある。 上空に浮かぶ薄い雲に巨大な穴が形成される現象「ホールパンチ雲(穴あき雲)」は、航空機の通過が原因ではないかと長い間考えられてきた。穴の周囲の雲は過冷却状態の水滴から成るが、凍結のきっかけとなる微粒子がないため氷晶が生成されず、液体の状態のままである。

 ただし、雲を作るちりなどの微粒子がない場合でも、水滴はマイナス40度以下にまで冷却されると凍結し始める。この程度まで気温が下がると、水分子の運動が遅くなり、自然と凍ってしまうためである。

 過冷却状態の雲の内部を航空機が通過すると、翼やプロペラ、タービンによって空気が急速に膨張するため、水滴が十分に冷えて凍結する可能性があることは知られていた。 水滴が凍結する際、物質の状態変化により、エネルギーが熱となって放出される。この「潜熱」がホールパンチ雲と何らかの関係があると推測された。

 アメリカ国立大気研究センター(NCAR)の大気科学者グレゴリー・トンプソン氏は次のように話す。「当初、潜熱が重要な役割を果たしているとは思っていなかった。しかし、この熱が原因となって、穴形成のプロセスが連鎖的に起きることがわかった。場合によっては、航空機が通過してから数時間にわたって続く。条件がそろえば、都市サイズの巨大な穴にまで拡大する可能性もある」。研究には、同センターのアンドリュー・ヘイムズフィールド氏も参加している。

 研究チームはまず、次のような仮説を立てた。潜熱の発生に伴い、生成されたばかりの氷晶が雲内部に逆流する。そして、雲内部では過冷却水滴が氷晶に変化し、氷形成の連鎖反応を促進する。形成された氷の帯はさらに密度を増し、降雪を引き起こすというものだ。

 潜熱によりホールパンチ雲が生まれるか確かめるため、潜熱が発生する場合としない場合の両方で、コンピューターによる雲のシミュレーションを行った。

 潜熱の影響を組み込んだ最初のシミュレーションでは、潜熱によって雲内部に氷晶が浮遊し、周囲で蒸発した水蒸気がその氷晶の表面で凝結し、雪が生成されることが示された。このモデルでは、最終的に雲に穴が形成され、実際の現象とほぼ一致した結果が得られたという。

 一方、潜熱の影響を組み込まなかったシミュレーションでは、実際と同じような現象は再現されなかった。

「航空機が地球規模の天候に影響を及ぼす可能性が低いことは、依然として変わらない」とトンプソン氏は強調する。「ホールパンチ雲のせいで空港周辺に大量の降雪が起きることはない。それほど大規模な現象ではないようだ」。

 同氏は次のようにも述べる。「調査では、航空機で何度も雲を通過しなければならず、膨大な時間がかかった。自然の雲を模倣するモデルの構築には、それだけのデータが必要だったんだ。雲に関するデータの精度向上にもなったと思う。ホールパンチ雲には大きな影響力はないが、今後の大気モデル構築では考慮に入れたほうがいいだろう」。 この研究は「Science」誌7月1日号に掲載されている。

Photograph courtesy Eric Zrubek and Michael Carmody

文=Dave Mosher

  • このエントリーをはてなブックマークに追加