アラビアの“一角獣”、絶滅危機を脱す

2011.06.20
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米バージニア州フロントロイヤルにあるスミソニアン国立動物園のスミソニアン保全生物学研究所(SCBI)にいるアラビアオリックス。

Photograph by Michael Nichols, National Geographic
 夢物語ではなかった。中東の砂漠に生息し、アラビアのユニコーンとも称されるアンテロープの一種が、絶滅寸前だった個体数を回復したことが明らかになった。 アラビアの詩や絵画に数多く登場するアラビアオリックス。2本の角が重なって1本に見える横向きの姿は、伝説上の動物ユニコーンを彷彿(ほうふつ)させる。

 しかし、この頑強な動物は、いずれ完全な伝説上の存在になると予想されていた。1972年には、野生の個体数がわずか6頭にまで減少したのだ。そのうち5頭は同年中に殺されるか捕獲され、最後に残った野性の“ユニコーン”も同じく1972年、オマーンで射殺された。食用または娯楽目的での乱獲が長く続いた末の出来事だった。

 ところが現在、サウジアラビア、イスラエル、アラブ首長国連邦(UAE)、ヨルダンにある生息域の一部では、アラビアオリックスの個体数が少なくとも1000頭にまで回復しているという。

 このことは、国際自然保護連合(IUCN)が2011年6月16日に発表した絶滅危惧種のレッドリスト最新版によって明らかになった。「1972年に野生の個体数が6頭ほどだったことを考えると、6頭から1000頭にまで回復するのは驚異的なことだ」と、イギリスにあるIUCNレッドリスト部門の責任者、クレイグ・ヒルトン・テイラー氏は話す。

 個体数の回復を受けて、IUCNはアラビアオリックスの評価を、「絶滅危惧IB類」(Endangered:近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの)から、より絶滅の危険性が低い「絶滅危惧II類」(Vulnerable:絶滅の危険が増大している種)に変更した。

 一度は「野生絶滅」(Extinct in Wild)に分類された生物種が、「絶滅危惧IA類」(Critically Endangered)および「絶滅危惧IB類」を越えて、3ランク上の「絶滅危惧II類」まで評価を回復するのは、IUCNの歴史上、今回が初めてのことだ。

 アラビアオリックスの個体数が回復したのは、保護団体や各国政府、動物園が広く連携し、種の保存に取り組んだおかげだ。1970年代に最後の野生個体群の中から保護目的で捕獲された個体のほか、アラブ首長国連邦(UAE)、カタール、サウジアラビアの王家や統治者が飼育していた個体が集められ、「世界の群れ」(World Herd)と呼んで人工繁殖が試みられた。

 1982年には、この保護下で繁殖した群れの中から少数の個体を、禁猟地に指定された保護区へ再導入する試みが始まった。再導入プロセスは、もっぱら試行錯誤の連続だった。ヨルダンでは、再導入した群れ全体が死滅したこともあった。「再導入をいかに成功させるかについて、われわれは多くのことを学んだ」とヒルトン・テイラー氏は話す。

 再導入プログラムにより、アラビアオリックスは1986年に評価を「絶滅危惧IB類」に引き上げられ、今回のレッドリスト更新までその評価を維持していた。

 総じて、アラビアオリックスの個体数回復は「協力して保護活動に当たれば、状況を変え、好転させることはできるという実例だ」とヒルトン=テイラー氏は述べている。「これは保護活動の真の成功例だ」。

Photograph by Michael Nichols, National Geographic

文=Christine Dell'Amore

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