“磁気の泡”、太陽圏の構造に新説

2011.06.08
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太陽系はラミネート状のシールドで包まれていると考えられてきたが、実際の外縁部は“磁気の泡”なのかもしれない。

Illustration courtesy ESA/NASA and G. Bacon/STScI
 太陽系は巨大な“磁気の泡”の海に包まれているのかもしれない。太陽系を包む磁気のバリアは、ラミネート状のシールドと考えられてきた。しかしNASAが発表した研究結果によると、実際には構造が異なり、予想以上の量の有害宇宙線や荷電粒子が系内に流入している可能性があるという。 この分析結果の根拠は、NASAの双子の宇宙探査機ボイジャー1号と2号のデータから作成されたコンピューターモデル。1977年に打ち上げられたボイジャーは、現在も地球から約160億キロ離れた地点で観測を続けている。

 1号は2007年、太陽風が形成し太陽系全体を包み込む「太陽圏(ヘリオスフィア)」という外宇宙との境界面に到達、荷電粒子量の大きな変化を確認した。2008年には、後を追ったボイジャー2号も同様の観測を行っている。

 荷電粒子の測定値から、ボイジャーが太陽圏外縁部に沿う“磁気の泡の塊”のような領域を通過したとコンピューターモデルは示している。この泡の塊は外宇宙からの荷電粒子を捕捉するため、領域内を通過する際には通常より高い量の荷電粒子を浴びると想定されている。

 アメリカ、ボストン大学の天文学者マラブ・オファー(Merav Opher)氏は6月9日、NASAの記者会見の席で、「モデルの分析結果から、泡の塊は幅が1億6000万キロで、長いソーセージのような形をしている」と説明した。また、その生成理由は太陽の回転運動だという。

 地球と同様、太陽にも双極(北極と南極)の磁場が存在する。太陽が回転すると、太陽系全体に広がるこの磁場に、プリーツスカートのような“ねじれ”や“ひだ”が生じる。「ボイジャーが観測を続けている太陽からかなり離れた地点では、“ひだ”が密集している」とオファー氏は話す。

 この不均衡によって無数の磁気の泡が生まれ、太陽圏外縁部に沿った“泡の海”を形成している可能性があるのだ。

 記者会見でメリーランド大学の物理学者ジム・ドレイク氏は、「かなりの量の泡があり、ジャグジーのような状態になっている」と述べた。「ただし風呂の水は撹拌されているが、太陽圏の泡の海はもっと穏やかだ。内部で振動が起こっているが、巨大なわけではない。測定によると、穏やかな乱流のような印象だ」。

 また、研究結果からは、太陽圏の外縁部にある宇宙線に対するシールドは、泡の“膜”に近いこともわかった。

 外宇宙からの宇宙線は一時的には泡の海に取り込まれるが、やがて太陽系内に流入し、太陽の磁力線に沿って地球や太陽の方へ流れて来るという。

「地球にいる限りは厚い大気の層に守られているから心配はない。しかし宇宙飛行士が火星に行く場合は別だ。太陽圏内の放射線環境には細心の注意を払わなければならない」とオファー氏は話す。宇宙線は人体の免疫系に対する危険性が特に高い。

 泡の海の分析が進めば、他の恒星の周辺環境に関する認識も変化するかもしれない。「この研究成果はいろいろ応用できるだろう」とオファー氏は語った。

 詳細は「Astrophysical Journal」誌に6月9日付けで掲載されている。

Illustration courtesy ESA/NASA and G. Bacon/STScI

文=Ker Than

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