世界で加速する自転車シェアリング

2011.06.07
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イギリス、ロンドンの自転車レンタルシステム「バークレイズ・サイクルハイヤー」の駐輪場。ロンドン市長は、ウィリアム王子とキャサリン・ミドルトンさん(現ケンブリッジ公爵および公爵夫人)の結婚祝いとして、このシステムで使用できる特別なタンデム自転車を贈った。

Photograph by Peter Macdiarmid, Getty Images
 寒くて雨が多い時期が過ぎると、世界各地で自転車シェアリングのサービスが活況を呈するようになる。既に展開している都市では設備のさらなる拡充が進み、ニューヨーク市、ハワイのカイルア市、イスラエルのテルアビブ市など、導入を決める都市も世界規模で増加している。 仕組みはシンプルだ。利用者は自転車を所有しなくても、少額の料金で自由に乗り回すことができる。決して新しいアイデアではないが、共有する方法はここ数年で極めてモダンな進化を遂げた。

 最新のレンタルポストは、従来の小銭を投入する方式とは異なり、コンピューターで管理されている。太陽光発電が組み込まれ、設置も容易で安価だ。また、多くのレンタル自転車はGPS追跡装置を搭載しているため、盗難防止にも対応している。スマートフォンで予約ができたり、カードキーをかざすだけでロックが外れるなど、簡単に利用できるシステムが多い。走行中に消費したカロリーまで算出してくれる場合もある。

◆世界各地で展開

 オーストリア、ベルギー、チェコ、フランス、ドイツ、イタリア、ポーランド、スペイン、スウェーデン、イギリスの欧州10カ国では、自転車シェアリングが急速に発達している。「10年前のサービス拠点はわずかな数だったが、今では約400にまで急増した」と語るのは、ドイツ、ベルリンに拠点を置く研究開発会社Choice GmbHの取締役ジャネット・ビュイトナー氏だ。

「EUでのブームの火付け役となったのはフランスのパリ、スペインのバルセロナだ。どちらも2007年に大規模なシステム運用を始め、好評を博している」と同氏はメールで述べている。しかし、ここ数年は、ヨーロッパの枠を越え、メキシコやブラジル、カナダ、韓国、台湾、オーストラリアなどへも広がりを見せている。例えば、テルアビブ市は2500万ドル(約20億円)を投じて新たに「Tel-O-Fun」プログラムを開始。先月より40カ所でサービスを開始し、450人ほどが利用登録しているという。

 アメリカでも一部の都市や大学で自転車シェアリングが始まっている。自転車の人気が低い同国での導入は、「注目に値する傾向だ」とビュイトナー氏は話す。

◆プログラムの課題

 とはいえ、課題も浮上している。プログラムの成功には、しばしば衝突する利害関係をうまくコントロールする必要があるからだ。「運営者は収入を増やしたいと思っているが、市長は街の知名度アップと低コストを望み、利用者は安く簡単に利用したいと言う」とビュイトナー氏は説明する。

 駐輪場用のスペース確保が政治的に難しい場合もある。例えば、ニューヨーク市のコミュニティ委員会は、駐車場や元々混雑しやすい歩行者スペースを侵食するのではないかと懸念を表明している。

 また、既存の自転車シェアリングのサービス継続性も未知数だ。オーストラリアのメルボルンでは、プログラムの発足以来、苦戦を強いられている。採算を取るには毎月1万5000件の利用が必要だが、約2000件不足している状況だ。おそらくはヘルメット着用の義務化(自前のヘルメットが必要で気軽な利用を阻む)、夏の高い湿度、不十分な自転車レーンなどが原因だろう。

◆自転車シェアリングの価値

「それでも長い目で見れば、他の交通機関の整備と比べて容易に実施できるうえ、コストも低い」とビュイトナー氏は述べる。「何よりも、環境に優しい街としてアピールできる」。

 市長らにとって、新しい自転車シェアリング導入を支持する一番の理由は、政治的にプラスに働くからというのが本音かもしれない。市民の生活のための政策立案は、市長や政党の高評価につながるケースが多いのだという。

 政治的な理由に加え、「住み心地をよくしたい」という世界共通の都市ニーズにも応えられる。大気汚染の低減や交通渋滞の解消、自動車用スペースの削減、家計を圧迫する高額なガソリン代の負担軽減など、メリットは多い。「コペンハーゲンやアムステルダムなどのように、車よりも自転車や公共交通機関を選ぶ市民が増えれば生活の質が向上するのは明らかだ」と同氏は述べる。自転車の利用率が低い地域でシェアリングのサービスを始めれば、「快適かつ安価な移動手段としての認知度が一気に向上する可能性もある」。

Photograph by Peter Macdiarmid, Getty Images

文=Josie Garthwaite

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