エイズ流行の起源は1880年代

2008.10.01
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1883~1885年頃に撮影されたベルギー領コンゴのレオポルドビル(現在のコンゴ民主共和国のキンシャサ)の住民。

 2008年10月に発表された研究で、HIVウイルスは19世紀後半から20世紀初めにかけて人間の間で流行し始めたことが分かった。キンシャサや周辺地域の急速な都市化がHIV/エイズの流行にとって大きな要因だった可能性があるという。

Courtesy the Royal Museum for Central Africa
 国際的な研究チームによると、エイズ(AIDS)が人間に感染し始めた時期は従来の説よりも30年以上早かったという。20世紀初頭にアフリカ中西部で進んだ急速な都市化によって誘発された可能性がある。その後の世界的大流行を促した状況を理解することは、今後エイズを制御してゆくこととともに、将来の新たなウイルス感染症の拡大を予防する上で重要な鍵となるだろう。 研究の責任者でアリゾナ大学の進化生物学者マイケル・ウォロビー氏は、「急速な都市化はエイズの大流行を開始させるターニングポイントとなった。人間が起こした状況の変化によって、人間の体内には存在していなかったウイルスが取り込まれ、人間の伝染病へと変質したのだ」と話す。

 これまで、世界中のほとんどのエイズの原因となっている「HIV-1グループM」という菌株の起源をたどると、1930年のカメルーンに行き着くと考えられていた。エイズ発症とHIV-1感染の広がりは、1960年頃にベルギー領コンゴの首都レオポルドビル(現在のコンゴ民主共和国のキンシャサ)で確認されるようになった。

 しかし、今回の研究によると、このウイルスが人間の間に流行し始めたのは1884~1924年頃のサハラ以南のアフリカである可能性が高まった。

 ウォロビー氏のチームでは1958~1960年にキンシャサで収集された組織サンプルを分析した。1960年に採取したサンプルの1つには、HIVウイルスの遺伝物質であるHIV-1 RNAが含まれていた。

 研究チームはこの1960年のウイルスの遺伝情報を、既存の最も古いHIV-1菌株と比較した。この菌株は1959年に採取されており、1960年のウイルスとは別に進化したものだ。その結果、1960年のウイルスは1959年の菌株とは大きく異なることが分かった。

 研究チームは次に、HIV-1ウイルスの進化的系統樹を作成した。1959年、1960年のウイルスをはじめ、最近の100種類以上のウイルス配列で構成されている。数学的モデルを使って分析した結果、1959年の菌株との数々の相違点から、1960年のウイルスは少なくとも40年かけて進化してきたことが判明した。両者の共通の祖先をたどると1908年までさかのぼることも分かった。

 この研究は、10月1日にNature誌で発表された。

 メリーランド州にある国立アレルギー感染病研究所(NIAID)のアンソニー・ファウチ所長は、「今回の研究で、HIVが人間に感染し注目される流行病となる前に、このウイルスが何十年間も潜んでいたことが確認された。1970~80年代に流行し始めた型のウイルスとは対照的だ」と述べている。

「HIVウイルスがチンパンジーから出現して人間の感染症として定着していった時間の経過について、一段と理解が深まった。植民地の終焉、人々の都市への移住、売春の増加、性的行動の乱れなど、感染症の広範な広がりを助ける社会的状況が整うまで、HIV-1は数十年の間、レーダーに映らないような“低空飛行”を続けていたのだ」とファウチ氏は説明する。

 ニューオーリンズにあるチュレーン大学の微生物学者ロバート・ギャリー氏は、「今回の研究は非常に重要だ。ウイルスの流行を促す要因は、社会の変化とウイルス自体の変質の両方が考えられるが、その状況を理解しておけば、将来ほかのウイルスが出現したときに、その流行に対する準備も容易になる」と述べている。

Courtesy the Royal Museum for Central Africa

文=Amitabh Avasthi

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