ニューヨーク沖合でクジラの“大合唱”

2011.05.06
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世界最大の動物シロナガスクジラ(資料写真)。この種を含め、大量のクジラの歌声がニューヨーク沖合で録音された。

Photograph by Flip Nicklin, National Geographic
 地球上で最大の動物シロナガスクジラをはじめ、大量のクジラがアメリカの大都会ニューヨーク市の沖合を訪れているという。 2008年から2009年の間、ニューヨーク州ロングアイランドの南岸一帯やニューヨーク港全域に、10台の海中録音装置のネットワークが配置された。研究結果によると、広大な海域に集まるたくさんのクジラの生息状況が確認された。

 研究チームの一員で、アメリカのニューヨーク州イサカにあるコーネル大学鳥類学研究所の生物音響学調査プログラムに所属するクリストファー・クラーク氏は、「さまざまなクジラがマイクに向かってステキな歌声を披露してくれた。ナガスクジラや30メートル超級のシロナガスクジラ、ザトウクジラ、ミンククジラ、イワシクジラ、さらには希少なタイセイヨウセミクジラなど、その多様性にはびっくりするばかりだ」と話す。

 ナガスクジラ、ザトウクジラ、セミクジラ、イワシクジラは、アメリカでは絶滅の危機に瀕していると考えられ、アメリカ版の絶滅危惧種リストに掲載されている。

「ただし、研究チームを最も驚かせたのは種類の多さではなく、調査海域全域に広がるクジラの密度だった」と、同プログラムの科学部門を統括するアーロン・ライス氏は述べる。

「大西洋岸の最大都市のすぐ沖合に、海の生物多様性を象徴するカリスマ的な生物が大量に生息している。この不思議な組み合わせに、誰もが注目した」。

 ライス氏によると、ニューヨーク市からわずか16キロほどの海を泳ぐクジラもいたという。

 コーネル大学のクラーク氏は、「自由の女神像の頂上に立って南から南東の方向を眺めれば、歌うクジラたちに手を振ることができる。もっとも海面の下を見通せる場合だが」と語る。

 海岸からの距離も驚きだった。予想よりもあまりに近い場合もあれば、はるかに遠い場合もあったという。

 海岸から約113キロ離れた録音装置は、タイセイヨウセミクジラの歌声を拾い上げている。このクジラは沿岸に生息する種で、はるか沖合まで遠征するとは考えられていなかった。

 ただし、現在の技術では、歌声が録音されたクジラの数を正確に算出することはできないという。

 ライス氏は、「クジラの存在はわかった。次の課題は数だ」と述べる。

 音声を主要なコミュニケーション手段とするクジラは、種によって鳴き声(コール)が異なるという。「録音を分析すれば種の違いは容易に特定できる」と同氏。

 ニューヨークの沖合からさらに北方のエサ場に向かう途中だった種もいれば、1年を通してこの海岸付近で過ごす種もいるという。時には、わざわざ港の中に入り込んでメディアの注目を浴びるお調子者もいる。

「今回の音響モニタリング調査は大きなプロジェクトの一環であり、本来は人間由来の音を対象にしている。アメリカ東海岸沿いはどんな音で満ちているのか、クジラ種に与える長期的影響の解明も目標だ」とライス氏は説明する。

 前述のクラーク氏は冗談交じりに言う。「海中録音はクジラの追跡技術として実績がある。何と言っても、クジラを黙らせることはなかなか難しいからね」。

 今回の研究成果は、5月4日にニューヨーク市で開催されたコーネル大学記者発表会(プレスランチョン)で発表されている。

Photograph by Flip Nicklin, National Geographic

文=Christine Dell'Amore

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