地中海で新たな沈み込み帯を発見か

2011.04.20
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ジブラルタル海峡(左下)から東へ延びる地中海。1994年に宇宙空間から撮影。

Photograph courtesy NASA
 ヨーロッパがアフリカ大陸の下に沈み込んでいるかもしれない。最新の研究によると、西地中海に新たな沈み込み帯が形成され、周辺の地震リスクが高まっている可能性があるという。 沈み込み帯は、2つのプレートが衝突し、片方が下へ潜ってマントルに沈み込む場所だ。緩やかに進行する場合もあるが、大きく揺らいで地震の引き金になるケースが多い。通常は海底にあるため、沈み込み帯型の地震は津波の原因になり、2011年3月の東日本大震災のように甚大な被害をもたらす可能性がある。

 地中海海底の一部も含まれるアフリカプレートは、何百万年も前から北のユーラシアプレートへ向かって移動を続けている。ただし、年に約1センチというスローペースだ。

 オランダにあるユトレヒト大学の研究チームは、同地域で起きた最近の地震を調査している。その結果、アルジェリアの海岸線からイタリアのシチリア島北部にかけて、プレート境界付近に新たな沈み込み帯形成の可能性が浮上した。研究責任者の地球物理学者リナス・ウォルテル(Rinus Wortel)氏は、「沈み込み帯の新たな形成は非常に珍しい」と語る。

 同氏によると、約3000万年前はプレートの上下が逆だった。当時、西地中海に大規模な沈み込み帯が存在し、アフリカプレートがユーラシアプレートの下に滑り込んでいたという。

 高密度の岩石から成るアフリカの海底がヨーロッパ大陸の下に潜り込んでいた。「しかし数百万年も経つと、アフリカプレートはかなり北へ移動し、西地中海に同プレートの海底部分がなくなってしまった。大陸部分だけ残されたが、海底より軽い岩質なため、沈み込みは起きなかった」。

 しかしその後も2つのプレートの収束は続き、地殻応力が生じていた。ユーラシアプレートでアルプス山脈、コーカサス山脈、ザグロス山脈が隆起したのもその影響である。

 研究チームは、プレート境界付近で最近起こった地震の位置や揺れから判断して、プレートの沈み込みが再開したと見ている。しかし、今度はヨーロッパがアフリカ大陸の下に滑り込んでいるという。

 今回の研究成果は、オーストリアのウィーンで開催された欧州地球科学連合(EGU)の最近の会合で発表された。新しい沈み込み帯発見の可能性には科学界の関心が集まったが、多くの科学者は慎重な姿勢を示している。

 アメリカ、ノースウェスタン大学の地球物理学者セス・スタイン氏は電子メールでの取材に対し、「荒唐無稽な話ではない。過去200万年の間に、地中海地方はイタリア本土などでも地質学的変化が起きている」と答えている。

 一方でアメリカ、オレゴン州立大学(OSU)の地球物理学者クリス・ゴールドフィンガー氏は、「簡単にはコメントできない内容だ」と態度を保留した。同氏は、OSUにあるアクティブテクトニクス海底マッピング研究所(Active Tectonics and Seafloor Mapping Laboratory)の所長を務めている。

 研究責任者のウォルテル氏は今回のデータから判断して、西地中海の地震リスクは評価の見直しが必要だと訴える。過小評価されていただけでなく、リスク自体が高まっている可能性があるという。「歴史的な経験から、3月に日本で起きたような大地震は他人事と考えてきた。しかし過去100年間に発生していないからと言って、リスクが皆無になるわけではない」。

 実際、シチリア島北東端の都市メッシーナでは1908年にマグニチュード7.1の大地震が起きている。高さ12メートルとも伝えられる津波が襲い、7万人が命を落としたという。

 さかのぼって1755年にはジブラルタル海峡の西で地震が発生。ポルトガルの首都リスボンを巨大津波が襲い、ヨーロッパ史上最大級の地震災害となった。約10万人が死亡したとの試算もある。

Photograph courtesy NASA

文=Richard A. Lovett

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