ヒザラガイの目は鉱物アラゴナイト

2011.04.15
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サンゴモに張り付くアオスジヒザラガイ。アメリカ、カリフォルニア州沿岸で撮影(資料写真)。

Photograph by Chad King/Monterey Bay National Marine Sanctuary
 軟体動物の一種であるヒザラガイ(多板鋼)の殻の後部には、目に似たビーズ状の構造が何百と並んでいる。新たな研究で、その詳しい働きが明らかになった。 アメリカ、カリフォルニア大学サンタバーバラ校の海洋生物学者ダン・スパイザー氏によると、大きく透明な石で作るレンズの役割を果たすという。

 この器官が視覚器なのか、それとも光強度の変化を感知するだけなのか解明されていなかった。「目の存在は100年以上前から知られていたが、見え方をテストした例はなかった」とスパイザー氏は話す。

 同氏はアメリカ、ノースカロライナ州にあるデューク大学の大学院生時代に今回の研究を行った。その結果、ヒザラガイは鉱物のアラゴナイトを取り込んで目を作る初めての動物だと判明した。アラゴナイトは炭酸カルシウムの結晶で、殻にも使用されている。

 スパイザー氏のチームはヒザラガイの視覚を調べるため、カリブ海からウェスト・インディアン・ファジー・カイトン(英名:West Indian fuzzy chiton、学名:Acanthopleura granulata)を採取した。ヒザラガイは外敵がいないと、長円形の体の一部を持ち上げて呼吸する。しかし、危険が迫ると、海底に張り付いて柔らかい腹部を守る。

 実験では、石板に1匹ずつ乗せ、その上に色が変わる白いスクリーンを設置した。ヒザラガイがリラックスした状態で、上方に黒いディスクをかざすか、スクリーンの色を白からグレーに変えた。黒いディスクは突然現れた捕食動物を模倣している。一方、スクリーンの色を暗くするのは、雲が太陽を隠すような自然光の微妙な変化を表現する。

 黒いディスクが現れると、ヒザラガイは防御の姿勢を取った。しかし、スクリーンが暗くなっても、くつろいだままだった。つまり、ヒザラガイの目は、本当の意味での視力の必須条件である、形の識別ができると判明した。

「ヒザラガイはものを見ることができる。大まかだが、近づいてくる物体と単なる光強度の減少を区別している」とスパイザー氏は説明する。

 同氏の推測では、ヒザラガイの目の解像度は人間の1000分の1程度で、白黒しか認識できない可能性が高いという。「目の小さいほかの動物と比べても、視力自体はあまりよいとは言えない」。

 とはいえ鉱物の目にも長所はある。まず、硬いアラゴナイトは極めて回復が早い。絶えず波が打ち寄せる潮だまり(干潮時に海水が残るくぼみ)に暮らすヒザラガイにとって、この特性は重要だ。

「人間や大部分の動物のように、タンパク質の目だったら、すぐぼろぼろになってしまう」とスパイザー氏は話す。

 さらに、アラゴナイトの目は空気中でも水中でも同じように見えるようだ。ヒザラガイの生息地では潮が引くこともあるため、おそらくこの特徴も有益である。どちらの環境でも、「行動を見る限り、同じ反応を示している」とスパイザー氏は述べる。

 物質が入射光の進行方向を曲げる度合いを屈折率と呼ぶが、アラゴナイトは2つの屈折率を持つ。水中、空気中で屈折率を使い分けている可能性がある。

 この研究の詳細は、「Current Biology」誌の4月26日号に掲載される。

Photograph by Chad King/Monterey Bay National Marine Sanctuary

文=Ker Than

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