太陽系の“最先端”を発見

2011.04.08
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
IBEXのデータを基にした画像。中央のさそり座の近くに太陽圏の最先端部分(赤い点)がある。

Image courtesy Nathan Schwadron, University of New Hampshire
 NASAの宇宙探査機が太陽系の最先端部分を発見した。銀河系(天の川銀河)における太陽の進行方向を指しているという。 この発見は、太陽圏観測衛星IBEX(Interstellar Boundary Explorer)から新たに送信されたデータに基づいている。IBEXは太陽系外縁部の地図を作成する目的で2008年に打ち上げられた。

 太陽が銀河系を移動するにつれ、太陽風(太陽から吹き出す荷電粒子)が星間ガスと衝突し、太陽系の周囲に繭(まゆ)のような「太陽圏」を作り出す。繭の端「ヘリオポーズ(太陽境界面)」は、太陽から145億キロ以上も離れている。

 研究を率いたアメリカ、ニューハンプシャー大学のネイサン・シュワドロン(Nathan Schwadron)氏は、「2005年、ボイジャー計画の探査機が外縁部の境界に初めて到達した。当時、極めて局所的な情報が得られた」と説明する。

「2008年から始まったIBEXの観測により、大局的な性質を確かめられるようになった。太陽系を包み込み、有害な銀河宇宙線から守ってくれている巨大な“泡”に関する40年来の理論が覆ろうとしている」。銀河宇宙線は高エネルギーの粒子で、宇宙を素早く飛び回っている。

 宇宙線は絶え間なく太陽系に降り注ぐが、太陽圏が大部分を遮断してくれている。それでも、少量はすき間を抜けて地球に到達し、人工衛星の電子機器や宇宙飛行士の健康にダメージを与えることもある。さらにヘリオポーズでは、太陽風と恒星間物質がぶつかってエネルギー中性原子(ENA)が生まれる。地球近くに到達するENAを全天観測するのが、IBEXの役目だ。

 2009年、IBEXの観測データから、ENAを強く発する巨大なリボン状構造が発見され、太陽圏の端に沿って“くの字”形で張り付くように存在していることがわかった。興味深い発見だが、このリボンが太陽圏の地図の作成を妨げていた。

 しかし、シュワドロン氏の研究チームは、ENA放射を観測データからデジタル処理で取り去ってみた。すると銀河系を突進する吹き流しに似た太陽圏の最先端が現れてきた。「リボンはちょうどこの領域を通っているので、観測の邪魔だったんだ」とシュワドロン氏は振り返る。

 太陽圏の最先端は大まかに言うと、黄道十二星座の一つ、さそり座の方向を指しているように見える。黄道は地球が太陽を周回する軌道であり、さそり座は黄道上にある。さそり座は夏の間、北半球の空に現れる。

 今回のデータ、そしてIBEXのほかのデータが太陽の軌道について何を示唆しているのか。シュワドロン氏らは現在もこの謎に取り組んでいる。銀河系の中心を周回する際、銀河面の上下を波のように何度か移動しながら、短い軌道を動いている可能性があるようだ。

 シュワドロン氏は、IBEXのデータが太陽圏への理解を深めてくれると信じている。例えば、太陽活動や星間ガスの圧力の変化によって泡のように膨らんだり、縮んだりするが、地球上の生命や有人宇宙探査に影響を及ぼすかもしれない。

「ヘリオポーズは強烈な銀河宇宙線から地球をどのように守っているのか? この答えを知りたい。生存可能な条件を太陽圏内で見いだせば、いずれその知識をほかの惑星系でも応用できるだろう」。

 IBEXの新しいデータについて記述した論文は、3月23日付けで「Astrophysical Journal」誌オンライン版に掲載されている。

Image courtesy Nathan Schwadron, University of New Hampshire

文=Andrew Fazekas

  • このエントリーをはてなブックマークに追加