今回見つかった財宝は既に大部分が洗浄、修復されており、その中にはカラウシウスが鋳造させたとみられる800枚近い硬貨も含まれている。カラウシウスは海賊掃討を任されたローマの艦隊司令官だったが、紀元286年に反乱を起こしブリタニア皇帝を僭称した。7年にわたりこの地を支配したが、自軍内の反乱で暗殺された。
ブリタニアを治めた7年間にカラウシウスは、プロパガンダ的手法も用いて自らの権勢を世に広めた。その手段のひとつが、写真にあるような自らの肖像を刻んだ良質な銀貨の発行だった。
発見された硬貨の中には、伝説上のローマの建国者、ロムルスとレムスがオオカミの乳を吸う姿が刻まれたものもある。カラウシウスが鋳造した硬貨で、こうした絵柄が見つかるのは初めてだ。この絵柄を用いることで、長い歴史を持つローマ帝国と自身を結びつけようとしたのかもしれない。
「カラウシウスはプロパガンダの名手だった」と、大英博物館の考古学者サム・ムーアヘッド氏は解説する。「皇帝の座に就くのとほぼ同時に、彼はこうした硬貨の鋳造を命じている」。
Photograph by Ben Birchall, PA Wire/AP