“去勢”されたクモは戦闘に強い

2011.03.31
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
オスグモの電子顕微鏡画像。下アゴの両側に付いていた生殖器が失われている。

Photograph courtesy Matjaz Kuntner
 去勢されたクモはもう愛し合うことはできない。しかし、戦闘では有利だという。 クモの多くの種では、オスは口元にある1対の付属器「触肢」を使って交尾する。ところが多くの場合、行為の最中に片方または両方の触肢が切り離される。生殖能力を失うことになるため、進化的には望ましくないように思える。

 しかし、切断されたオスの生殖器はメスの体内に残り、ほかのオスの交尾を防ぐという説もある。

 オスが“去勢”される理由を知るため、交尾の様子を詳しく観察する研究が行われた。被験者に選ばれたのは、東南アジアに生息するコガネグモの一種マラバルジョロウグモモドキ(学名:Nephilengys malabarensis)。

 その結果、切断された生殖器は75%の確率で、メスの体内に効果的に残っていることが確認された。また、生殖器を失ったオスは極めて攻撃性が高くなり、積極的にメスを守っていた。

 オス同士の戦いでは、両方の触肢を失って生殖能力がゼロになった個体の方が、片方のみ、または無傷の個体より有利だという。ライバルを攻撃し、追い回し、打ち負かす確率が3倍以上高いという結果となった。

 オスは繁殖手段のすべを失うと強力な戦士に変身して、自らの“投資”を守ろうとすると考えられている。

 リュブリャナのスロベニア芸術科学アカデミーに所属するクモ専門家で、研究に参加したマチャズ・クンター(Matjaz Kuntner)氏は、「確信はないが、触肢を失ってからホルモンの値が変わり、それまでと異なる行動に出るのかもしれない」と説明する。「もはや成すべき事を終えたオスが思い残すことなく戦う、というのが真相だろう」。

 クンター氏によると、マラバルジョロウグモモドキのメスが交尾後にオスを食べる姿がしばしば目撃されている。共食いのリスクと受精のチャンスを天秤にかけて、オスは自らの生殖器を切り離しているのかもしれない。

 この研究結果は、「Animal Behaviour」誌オンライン版に3月23日付けで発表された。

Photograph courtesy Matjaz Kuntner

文=Charles Q. Choi

  • このエントリーをはてなブックマークに追加