研究チームの一員でアメリカ、ニューヨーク市にあるコロンビア大学の心理学者エドワード・スミス氏は、「実生活で失恋した人の脳をMRI(核磁気共鳴画像法)でスキャンしたら、苦痛感情と関係する脳領域の活動が活発化していた」と話す。
スミス氏の研究チームは被験者を集めるため、マンハッタン一帯でチラシを展開した。また、「Facebook」や地域情報サイト「Craigslist」の広告を通じて告知を行い、40名の協力を得た。参加者はすべて過去6カ月以内に、不本意な恋愛関係の破局を経験している。
研究チームは被験者の別れた恋人の写真を用意し、MRI装置で検査中に眺めて失恋時を思い出すように求めた。すると、二次体性感覚皮質と背側後部島皮質という肉体的苦痛をつかさどる脳領域が活発化することがわかった。
スミス氏はこう話す。「拒絶体験者と未体験者を比較したわけではない。しかも研究室外の過去の行動はコントロールできないので、信頼性には問題が残る。また、失恋した人たちの間に特殊なパターンが確認されたが、別の原因によって引き起こされた可能性は常に存在する」。
それでも、研究結果は特筆すべきものだという。「恐怖、不安、怒り、悲しみなど、さまざまな否定的な感情を対象に150回の脳スキャン実験を行ってきた。しかし、どの感情的な苦痛経験も、“望まない失恋”と同じようなパターンで肉体感覚をつかさどる脳領域を活発化させることはなかった。やはり想い人からの“拒絶”には、特別な影響力があるのだろう」。
今回の研究成果は、「Proceedings of the National Academy of Sciences」誌オンライン版に3月28日付けで掲載されている。
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