新発見、牙のような剣歯の古代草食動物

2011.03.25
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新発見のティアラユーデンス・エクセントリクス(Tiarajudens eccentricus)には、草食動物なのに牙のような剣歯がある。発見した古生物学者による再現イラスト。

Illustration courtesy Juan Cisneros, Science/AAAS
 恐竜の時代よりはるか以前に生きていた哺乳類型爬虫類の新種が発見された。ティアラユーデンス・エクセントリクス(Tiarajudens eccentricus)と名付けられたこの動物は、実に多様な歯を備えており、すりつぶすこと、引きちぎることのほかに、威嚇するためにも使われたらしい。牙のような剣歯を備えながら、草食性なのだという。 大型犬程度の大きさのこの動物には、クレヨンくらいの大きさの巨大な剣歯を持っていた。そのうえ口蓋には何列にもびっしりと歯が生えていた。これはサメに見られる特徴で、歯が抜けてもすぐ次の歯で置き換えられていたと思われる。

 哺乳類型爬虫類とも呼ばれる獣弓類のうち、異歯亜目に属する生物の2億6000万年前の化石がブラジルで発見された。発見した古生物学者のフアン・カルロス・シスネロス(Juan Carlos Cisneros)氏は、この化石は草食動物のもので、「さまざまな動物を組み合わせたような外見をしていた。もしこの動物を目の当たりにしても、しばらくは我が目を疑うだろう」と話す。「ウマのような門歯があり、植物を噛み切ったり引きちぎったりするのに向いている。カピバラのような臼歯はすりつぶすのに向いている。それに、サーベルタイガーのような剣歯もある」。

 ベルリン・フンボルト大学の古生物学者のイェルク・フレビッシュ(Jorg Frobisch)氏が特に驚いたのはこの剣歯だという。「普通、剣歯があるのは肉食動物だと思うだろう」。しかし、この生物の主食は繊維質の植物なのだ。剣歯は犬歯がサーベルのように発達したもの。「よく知られているのはもちろんサーベルタイガーの仲間だが、ほかにも有袋類、つまりカンガルーやウォンバットの仲間の(絶滅)種のいくつかで知られている」。フレビッシュ氏は今回の研究には参加していない。

 このティアラユーデンス・エクセントリクスの剣歯は、捕食者を牽制するか、あるいは仲間を威嚇したり実際に攻撃したりするのに役立っていたのではないか。これが、新種の発見を伝える論文の著者らによる推測だ。「同種の仲間内での威嚇や決闘に使われる剣歯は、草食動物では6000万年前からそれ以降になって登場したものと考えられていた」とシスネロス氏は語る。シスネロス氏はブラジルのピアウイ連邦大学の古生物学者で、今回の研究のリーダーを務めた。

 ティアラユーデンス・エクセントリクスが剣歯を同じように使っていたのであれば、剣歯の登場は通説よりも「ずっと早い」ことになる。この生物の生きた2億6000万年前には、「陸生生物の世界ではまだ草食動物が支配的だった」とシスネロス氏は話す。

 ティアラユーデンス・エクセントリクスという名前は、「ティアラフ地域の特異な歯」という意味で名付けられた。それにしても、草食動物がなぜこのような特異な歯を備えているのだろうか? その答えは進化の過程での試行錯誤に隠されている。

 この動物は非常にさまざまな種類の歯を備えつつも、噛み合わせるとぴったり閉じる。そのほうが、繊維質の葉や茎をすりつぶして消化するのには良い。このように優れた噛み合わせを持つ獣弓類の初期の例が発見されたことで、ヒトをはじめとする哺乳類の今日の歯並びの秘密についてもヒントが得られるかもしれない。哺乳類は獣弓類から進化したと考えられているからだ。

「この動物はすでに、現代の反芻動物のような食べ方が可能だった。これはとても興味深い」とシスネロス氏は言う。反芻動物とは、一度飲み込んだものを再び噛むウシやヤギの仲間を指し、その胃はいくつもの部屋に複雑に分かれている。

 このように特殊な形で歯並びが進化したことは、恐竜が地上を支配するよりも前のペルム紀(二畳紀)なかばに、異歯亜目が驚くべき繁栄を遂げた理由のいくつかのヒントを与えてくれそうだ。

「異歯亜目は陸生の草食動物としては最も繁栄したグループだ。種の数が最も多く、最も多様な形態に進化し、この時代の環境に最も良く適応した」と、フンボルト大学のフレビッシュ氏は話す。「穴を掘るもの、木に登るもの、水陸両生のもの、ラットくらいの小型のもの、ウシ並みに大型のもの、これらがすべて同じグループに属している。これは哺乳類の祖先では珍しいことだ。このように早くからさまざまな歯を試していたことも、このグループが繁栄した理由の1つだと断言できる」。

 ティアラユーデンス・エクセントリクスについての論文は「Science」誌の3月25日号に掲載されている。

Illustration courtesy Juan Cisneros, Science/AAAS

文=Brian Handwerk

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