最新原発なら福島事故は無い?(1)

2011.03.24
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福島第一原子力発電所で冷却作戦を展開、破壊された4号機に放水する防護服の作業員たち(3月22日撮影)。新しい世代の原発設計では電源喪失時の冷却に「受動的安全システム」を採用しているが、まだ実際の運用数は少ない。

Photograph courtesy Tokyo Electric Power Company via Kyodo/AP
 近年、世界的に原子力利用の拡大機運が高まっていたが、福島第一原子力発電所の危機によって重大な疑問が突きつけられている。日本最古の原発でオーバーヒートの原因となった電源喪失を、新型原子炉は切り抜けられるだろうか? 必ずしも楽観視できないのが実情のようだ。

 原子力業界では既に、「受動的安全(パッシブセーフティ)システム」を搭載した第三世代の原子炉を開発している。日本で起きたような事態にも対応できるシステムだ。今までは、放射性燃料と使用済み燃料の冷却に欠かせない水をポンプで汲み上げるため、電力を全喪失すると危機的状況に直結する。しかし、最新世代の設計を採用している原発は、世界で建設中の65基のうちわずか4基にすぎない(アメリカのジョージア州、サウスカロライナ州にある敷地造成中や規制認可待ちの4カ所を加えると、69基中8基になる)。

 残りの大部分の47基は未だ“第2世代”の設計で、福島第一と同じく1970年代の思想を受け継いでおり、統合的な受動的安全システムを採用していない。

 原子力関係者は、当初からこのシステムが採用されていなくても、既存の原子炉や建設中の設計図に同様の改良を加えていると指摘する。アメリカの業界団体、原子力エネルギー協会(NEI)によると、例えばカリフォルニア州南部沿岸にあるサンオノフレ原子力発電所では、電源喪失時に一時的に「重力駆動型システム」を使って冷却水を循環できるように改良を加えたという。

 だが、改良にも限界がある。NEIの戦略計画責任者エイドリアン・ヘイマー氏は、「地震が起きたら大量の水タンクに問題が発生する可能性がある。設計初期段階から完全な受動的安全システムを統合するように取り組みを進めてきた」と話す。

 稼働中の原発で、重力駆動型などのセーフティ機能を導入済みかどうかまとめられた資料はない。計画段階、または建設中の発電所についても、統合的な受動的安全システムの採用は遅れている。原発の建設は、立地調査、政府認可に始まって、資金調達、設計・完工まで数十年かかる場合が通常だ。トレンドが目まぐるしく変わるハイテクの世界と違って、一度方向性が定まると変更は極めて困難な世界だ。稼働中の原発の大部分は、30~40年前に確立した基礎技術をもとに建設されている。

◆ジェネレーション・ギャップ

 福島第一では原子炉6基のうち5基がゼネラル・エレクトリック社(GE)製のBWR-3(沸騰水型原子炉)型で、Mark 1型格納容器を採用している。現役の発電所のうちGEの沸騰水型原子炉は92基、Mark 1は32基が採用している。

 業界、規制当局双方で共通の「開発世代」分類に従えば福島第一は、原発開発で並び立つアメリカやフランスの大部分と同様に“第2世代”に当たる。ロンドンに本拠を置く業界団体の世界原子力協会(WNA)によると、第1世代は1950~60年代に開発された。この世代をまだ運用しているのはイギリスだけで、北ウェールズのウィルファ原子力発電所がその1例だ。

 ヘイマー氏によると、1979年のスリーマイル島原発事故をきっかけに、原発設計についてリスクと安全性の再評価が行われたという。「すべての電源を失ったらどうするか? 核燃料が損傷する前に動力源を回復する必要がある」とヘイマー氏は言う。

 福島第一の冷却システムの問題を踏まえると、重力を利用して圧力容器に冷却水を送り込む方法が効果的だろう。家屋の屋上に設置された貯水タンクのイメージに近い。蛇口をひねると、重力によって水が下に流れ、パイプを通ってキッチン・シンクに出る。原子炉の場合はその後、炉心で空気と水が加熱され、パイプを通して熱交換器に送り込まれる。

 福島第一と同じ旧世代のシステムで冷却システムが失われた場合について、ヘイマー氏は次のように述べる。「電力系統が失われるとすべての設備がゆっくりと停止に追い込まれる。受動的安全システムがあれば、一連のバッテリーに再充電できる発電機を手当てして、炉心に冷却水を送り込む時間を稼げる可能性がある」。

◆テクノロジーの“スロー”な進化

 第3世代の設計には、受動的安全システムや「固有の安全性(自己制御性)システム」が導入されるようになった。しかし、世界で運用中の442の原子炉のうち、第3世代は15基のみである(日本と韓国各4基、カナダ、中国、ルーマニア各2基、アルゼンチン1基)。また、日本、中国、台湾、韓国、フィンランド、フランス、ロシアで14基の建設が進む。NEIの資料によると、運用中の第3世代原子炉は1982~2007年に運転が開始されている。必ずしも最先端の原子力技術とは言えないのだ。

 米国エネルギー省の分類によると、その次の進化形は“第3世代プラス”と呼ばれ、事故発生時には完全に受動的安全システムへ依存する設計となっている。

 原子炉に絶えず必要な“冷却機能”という課題に対処するため、電力線やディーゼル発電機、予備バッテリーの代わりに、重力、自然対流、伝導などの活用が主な戦略として浮上した。WNAの資料では、「受動的安全システムは、機器類の復旧や補助電源、作業員の制御に頼るのではなく、“物理現象のみ”に依存する」と説明されている。

「交流電源や外部冷却水がなくても少なくとも72時間は動作可能で、完全に機能する受動的安全性を備えた設計だ」とヘイマー氏は説明する。

 現在、世界初の第3世代プラス原子炉4基の建設が中国で進んでいる。東部の浙江省で2013年に稼動予定の三門原子力発電所もその1つだ。アメリカでも、4基が敷地造成の段階にある。ジョージア州ウェーンズバロ近郊にあるサザンカンパニー社のボグトル原子力発電所の2基と、サウスカロライナ州ジェンキンスビル近郊にあるサウスカロライナ・エレクトリック&ガス社のバージル・C・サマー原子力発電所の2基である。

 8基の第3世代プラス原子炉はすべてウェスティングハウス社設計の「AP1000」型で、非常時には冷たい外気を鋼製格納容器の周囲に循環させ、容器上方に設置されたタンクから水を重力落下させる。ウェスティングハウス社広報のスコット・ショー氏によると、最長72時間冷却可能という。

 その後、小型のディーゼル発電機が電気を供給、施設内の貯蔵容器から炉心と使用済み燃料プールへ毎分約380リットルの水を最長4日間送り込む。「わが社はこのAP1000で第2世代から第3世代プラスへと一気に進化した」とショー氏は胸を張る。

≪(2)に続く≫

Photograph courtesy Tokyo Electric Power Company via Kyodo/AP

文=Josie Garthwaite

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