土星の衛星タイタンでメタンの“春雨”

2011.03.18
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2010年10月に土星探査機カッシーニが撮影した土星の衛星タイタン。赤道付近の雲が確認できる。

Image courtesy NASA/SSI
 土星最大の衛星タイタンでは“4月”に雨が降ることが判明した。ただし極寒のタイタンの春雨は、穏やかどころか恵みの雨などとはほど遠い。地球の天然ガスの主成分、メタンの雨が降ってくる。 以前、「タイタンでは地球の水循環と同じように、メタンが循環している」との研究が発表されているが、今回の発見はこれを裏付けることになった。

 タイタンの極地付近でメタンの湖が発見されており、湖面の霧の発生や、湖と大気の温度差による湖水効果の雲ができていると判明している。湖の液体メタンは、地球の水と同じように気化して大気中に拡散していると考えられている。さらに、南極では新しい湖が登場し、雲から冷たいメタンの雨が降っていることが推測されている。しかし赤道地域は乾燥しており、波打つ砂丘が広がるだけと考えられていた。

 ところが昨年9月、NASAの土星探査機カッシーニの観測より、タイタンの赤道付近に巨大な雲が確認された。研究チームのリーダーでアメリカにあるジョンズ・ホプキンス大学応用物理学研究所の惑星科学者エリザベス・タートル氏は、「まったくの想定外で、誰もがくぎ付けになった」と話す。

 雲が現れてからは、砂丘地帯の長さ2000キロ、幅130キロ以上という広大な範囲の色が暗くなっている。そして2週間後、砂丘はしだいに明るくなり始めた。「雲からメタンの雨が降り、徐々に気化していったいう説に支持が集まっている」とタートル氏は話す。

「例えば“巨大な暴風が砂丘表面の形を変えた”といった可能性もゼロではないが、かなり低いだろう」。その後、砂丘の明るさがゆっくりと通常に戻ったので、なんらかの液体、おそらくはメタンが気化していったと考えられている。

 また、以前に撮影された砂丘の画像では、河川の流路のような地形構造が確認されている。地球の砂漠にある乾燥した河床とよく似ており、注目を集めていた。古代の湿潤だった時代の名残とも考えられるし、今も吹く季節性の嵐によって刻まれた水路なのかもしれない。

 タイタンの赤道地域で嵐が観測されたことはない。タイタンは地球に比べて太陽との距離が遠いため、1年の長さが29倍もある。その結果、カッシーニが観測できる時期がタイタンの1年のうちのごく一部に限られるのである。タートル氏は、「2004年の観測は1月中旬に相当する季節に行われた。そして今回は4月上旬に相当する」と話す。

 季節が異なる観測が今回の発見につながった。地球と同じようにタイタンでも季節的な気象変化が存在するようだ。

 タイタンの雨がどれくらいの雨量なのかはまだわからない。「場所によっては洪水を起こすほどかもしれないし、 広い範囲の霧雨程度かもしれない」とタートル氏は話す。「地球でもちょっと雨が降れば路面の色がすぐ暗くなるからね。遠くからではなかなかわからない」。

 今回の研究成果は、3月18日発行の「Science」誌に掲載されている。

Image courtesy NASA/SSI

文=Richard A. Lovett

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