フクロアマガエルの1種(学名:Gastrotheca guentheri)は進化の過程で下アゴの歯を失ったが、再獲得している。

Photograph courtesy William E. Duellman, Biodiversity Institute/University of Kansas
 カエルの下アゴの歯が2億年振りに“復活”したという研究結果が発表された。複数の専門家によると、進化論の土台を揺るがす発見だという。 合わせて6000種を超えるカエルのうち、大部分は上アゴに小さな歯があるだけだ。一方、南アメリカに生息するフクロアマガエルの1種(学名:Gastrotheca guentheri)だけは上下のアゴに歯が生えている。

 カエルの共通祖先は長く下の歯を保持していたが、系統樹を分析したところ、2億3000万年以上前に失い、共通祖先自体も最終的に絶滅したことがわかった。

 研究論文の著者ジョン・ウィーンズ氏は、このフクロアマガエルの下の歯は初めはなかったが、「500万~1500万年前に突然、生えてきた」と説明する。

 アメリカ、ニューヨーク州にあるストーニーブルック大学で進化生物学を研究するウィーンズ氏によると今回の発見は、進化の過程で失われた身体的な構造は二度と復活しないとする「ドロの法則」(進化非可逆の法則)に反するという。

 実は、この法則に抜け穴があったのかもしれない。「上アゴなど、既にどこかに存在する構造であれば、復活させるのははるかに容易だ」と同氏は説明する。8年ほど前から、動物の高度な構造が復活した証拠が次々と見つかっている。例えば、ナナフシの羽根やトカゲの指などだ。

 ウィーンズ氏は複数の統計的な手法を用い、共通祖先を持つカエル170種の歯の進化をたどった。現生種だけでなく化石種も対象に、DNA配列などのデータを組み合わせた。

 数百種のカエルは下の歯を失ったが、このフクロアマガエルだけは例外だったとも考えられる。だがウィーンズ氏は、「一度失われて復活した可能性の方がはるかに高い」と述べている。

 それにしても歯が復活した理由は定かではない。多くのカエルにとって、歯はそれほど重要ではない。ウィーンズ氏によると、虫を捕まえるときはたいてい舌に頼るという。

 ただし、ツノガエル属に代表される肉食のカエルは獲物を捕らえる際、歯が重要な役割を果たしているとウィーンズ氏は説明する。ツノガエルは上アゴに牙のような歯を持ち、さらに一部の種は下アゴに歯のような構造を発達させている。それでも今回のフクロアマガエルと異なり、下アゴに生えているのは本物の歯ではない。

「本物の歯ではなく歯に似た構造の方が多い事実は、必要に応じて自動的に歯が進化するわけではないことを示している」と、イェール大学の進化生物学者ギュンター・ワグナー氏は今回の研究に対し指摘する。

 この点を考慮すると、自然選択の観点からではフクロアマガエルが下の歯を再獲得した理由を説明できない。自然選択とは、同じ種の中で有益な特質が時とともに広がっていくことだ。

「謎に包まれていることだけは確かだ。非常に興味深い」とワグナー氏は述べている。

 今回の研究論文は、「Evolution」誌オンライン版で1月27日発表された。

Photograph courtesy William E. Duellman, Biodiversity Institute/University of Kansas

文=Christine Dell'Amore